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最終回読んでから読んでね☆

―7th Spirit ~Epilogue~―



ここは、とある有名な病院。どんな状況であっても、患者を受け付ける。病院だから、それは当然なのだが。簡単に言ってしまえば、普通の病院だということはかわりない。しかし、何故「有名」と言われるようになったのだろうか。
沢山の患者が立ち寄る事で有名?それとも、設備が万全だから治すのが早い事で有名?
よく解らないものである。

そんな病院に、一人の青少年が入院している。「何故?」と聞かれれば、「彼は交通事故にあったからだ。」と答えるのが妥当だろう。突然道路に飛び出し、トラックと正面衝突したのだ。

入口から入り、5m~7m先にあるカウンターを左に曲がり、10m~15mぐらい歩くとエレベーターが2つ見えてくる。病院だけあって、中は結構広い。店員20~30人は軽く乗れる感じだ。そのエレベーターにのり、8階のボタンを押す。
8階に着くと、目の前には何やら休憩所のような空間がある。テレビがあり、ソファーがあり、小説や漫画があり・・・憩いの広場か何かだろう。その場所を横目に前に進むと、入口にあったカウンターほどではないが、事務室といったような広さのカウンターが右に見えてくる。そのカウンターを過ぎ、少し歩いた場所に「813」と書かれた個室に着く。そこが彼の病室だ。個室なだけに、結構広い。扉は横に引くタイプになっていて、開けっ放しにならないように、バネがゆっくり跳ね返り勝手に閉まるようになっている。
ベットのまわりはカーテンで隠れている。しかし、4分の3ほどしか隠れていず、奥に行けば姿が見えてしまうのだ。そして、隅には小さな引き出しのようなものがあり、板が出るようになっている。つまり、小さなテーブルになるといいうことだ。もちろんその下の引き出しは普通にものを入れるためのものである。
その引き出しの上には、テレビが置かれている。よくみると、何故かリモコンが見当たらない。別に、見たいときに見たいとか言うと、それに反応して電源がつくわけではない。彼が寝ているベットにしっかりと置かれているのだ。何故なのかは、さっぱりわからない。

彼はベットの上で、リズムの取れた寝息を立てて眠っている。髪の毛は元々縛ってあったのか、少しクセになっている。しかし、トレードマークのように立っている髪は、寝ていても他の髪と混じらず、ピンッと立っている。不思議だ。頭には包帯が巻かれていて、布団から出た片方の腕には、点滴が付けられている。
彼の隣には、彼と同じぐらいの歳の女性が、椅子に座りながら悲しそうに見つめている。おそらく、彼の愛する彼女であろう。服装は結構フリルが目立つスカートに、短めのコートのような服を着ている。袖の先には、コートのフードによくあるファーのようなものがついている。しかし、なかなか起きないようで、それを待っている彼女は、時折眠たそうな表情になる。だが、寝てはならないと、すぐにキッと表情を変える。そして、それを何度か繰り返すのだ。

そういえば、何故この部屋には寝ている彼と、その彼女しかいないのだろうか?と思う人がいるだろう。確かに、普通ならば家族が寄り添うものなのだが、この彼の家族、起きたときのムードを壊すのも気が引けるからと、しばらく違うところで待っていることにしたのだ。
空気を読んでいるのか読んでいないのか、よく判らない家族である。

そうこう説明している間に、とうとう彼女は眠ってしまったようだ。しかも、座った状態でベットに上半身を乗せる感じに。しかし、それは仕方ないだろう。彼が事故にあってから、7時間ほど近く経とうとしているのだから。
ちなみに彼女は、上半身を乗せているので、当然のごとく彼の上にも乗ってるということになる。何と無くだが、彼が少しだけ苦しそうに見えるのは、気のせいだろうか。

そして室内は、音がないぐらいの、静寂の時間が過ぎていく。

ふと、彼女は何かの気配を感じ、目を覚まし体を起こした。眠気をはらい、眠ったままの彼を見つめると、点滴が着いている方の腕がピクリと動いたのだ。それから何度か動いた後、彼はゆっくりと瞼を開けた。
目線だけで、周りの風景を眺めると、視界には自分の彼女の姿がうつる。彼女は嬉し涙を浮かべ、彼をしっかり見つめた後、思い切り抱き着いた。
状況の掴めない彼は、自分に抱き着く彼女を見て、焦ったような態度を取った。そして、何があったのかと記憶を探ると、勢いよく体を起こした。しかし、そのせいで包帯が巻かれている頭が痛み、心配になった彼女が彼の体を支え、再び仰向けの体制になった。

そして、タイミングよく彼の家族も部屋に入ってきた。両親ともども、嬉しそうな表情を浮かべている。彼の姉らしき人物は、嬉しながらも彼の頭を叩いてやった。怪我人の頭を叩くやつがあるかと、再び起き上がったが、また痛みだし結局寝た状態に戻る。
暫くすると看護士やドクターが部屋に入り、座談を含んだ会話をした。後どれぐらいで退院なのか、食事はどんな感じかなどなど・・・。
一段落会話をした後、彼は突然屋上に行きたいと言い出した。しかし、夜も遅いのでまた明日にしてくれないかと、ダメ出しをくらってしまった。

とりあえず彼の家族一同は、いったん自宅に帰るといい、部屋を出ていった。彼の彼女は、どうやら親に許可を得たようで、彼と共に一夜を過ごす気満々であった。
そんな彼女を見た彼は、恥ずかしそうにそっぽを向いたが、まわりに自分と彼女以外誰もいないことを思い出して、体をゆっくりと起こした。そして、彼女に近くに寄るようにいうと、腕をのばして彼女の肩に手を起き、そのまま自分の顔に近づけ、唇にキスをした。ちなみに、これが彼のファーストキスである。

10秒ぐらいそのままの状態で、そっと彼女から離れる。彼女は突然の出来事に驚き、全く言葉が出てこなかった。口に手をあて、頬を赤らめている。
そんな表情をしている彼女に、彼も頬を赤らめながら、一緒にいてくれるお礼だと言った。そして、そのままベットに横になり、彼は眠ってしまった。次いで彼女も、ベットの隣に置いてある折りたたみ式の小型ベットを用意し、そこに掛け布団を置いた。そして、優しい表情を作りながらおやすみと呟き、彼女も眠りについた。


早朝6時15分――
彼は目を覚ます。しかし、体をうまく起こせないため、まだ仰向けのままだ。自力で起きようにも、体全体に痛みが走り、仰向けのままになるのだ。
一緒に寝ていてくれた彼女とはいうと、今の所まだぐっすりと眠っている。早く起きてくれと思っているのは、後にも先にも彼だけである。
しかし、ここは起きたいところ。体に痛みが走るが、起き上がらなければならないのだ。何故かと問われれば、ただ起きたいだけと答えるのが妥当だ。
だが、何故か彼は早く起きあがらなけばならなかった。その理由は、昨夜、夜も遅いのでダメだしをくらったからである。しかし、彼にはまだ他の理由があったみたいだが、それはすぐにわかるだろう。

自力で起きようと、じたばたしている彼の物音に気付いたのか、彼女がゆっくりと起き上がり、眠い目をこすると、必死に起きようとする彼の姿が視界に入り、急いで彼の体を支えて起こした。起き上がった彼は、屋上に連れていってほしいと要求した。

誰かがいるかもしれない。俺はその人に会わなければならない。そんな気がするんだ。

彼はそう言った。
そして、彼女は彼の言われるがままに従い、うまく体を支えながら、彼を車椅子にのせた。そして扉に向かい、彼女が扉を開け廊下に出る。
右に曲がり、カウンターを過ぎ、憩いの広場を過ぎ、エレベーターにたどり着く。上に行くため、ボタンを押すとすぐに扉は開く。早朝なのですぐに来るのは当たり前なのだが。
エレベーターにのり、屋上へ行くためボタンを押す。ちなみに判っているとは思うが、扉を開けたりボタンを押したりしているのは、彼の彼女である。彼が自分でやれるというように手をのばした結果、倒れそうになったりしてしまったため、すべて彼女がやってくれたのである。彼も怪我人なのだから、それらしくしてほしいものである。

屋上の階につき、そこから5mぐらい進んだところの扉を開け外に出る。目の前に見える多くの物干し竿には、何枚ものシーツがかけられている。早朝なのに、何故シーツがあるんだと思われるが、そこは突っ込んではいけない。
天気は、雲が一つも見えない晴天。青々とした空が、どこまでも進んでいる。そんな晴天な空に、小鳥達が囀りながら優雅に飛び回っている。
屋上から見える景色は、早朝にも関わらず、意外と車が多く走っている。この時間帯はきっと、仕事にいく人がほとんどであろう。

そうやっていろいろな景色をみていると、視界に20代後半と見られる男性が、柵に腕をついてこの屋上から見える景色を眺めていた。20代後半といったはいいが、顔立ちやちょっとした仕種が、何かと子供っぽい感じに見えてしまう。
そんな男性を眺めながら少しずつ近付いてみると、ますます子供っぽく見えてしまう。この男性のほうが、明らかにこちらよりも年上だというのに、何がどうやってこの男性を子供っぽく見せているのだろうか。
とりあえず、こうやってみていると、必ずといっていいほど気付かれてもいいはずなのだが・・・

「ん?」

気付かれた。
しかし意外な声だ。まさか声までもが子供っぽいだなんて。

「あ、その、すみません!」
「別に構わないよ。何だか、僕が君達を驚かした感じになっちゃったし。」

やはりどのように聞いても、声変わりがきてるはずなのに、子供のような幼い声をしている。子供のような男性は、彼に優しそうな笑顔を見せた。どう見ても子供の笑顔なのだが。

「そういえば、君達はどうしてここに?」
「あ、その、誰かに会わなくちゃって思って・・・。」

彼がその言葉を言ったとき、男性はクスクスと笑い出した。彼がいった言葉に、何か面白いことでもあったのだろうか?
そんな男性に、彼は「笑わないでください!」と少し頬を赤らめながら、強めにそう言った。

「いやぁ違うんだよ。君と僕の目的が同じだから、驚きを越えてつい笑っちゃったんだよ。」
「ってことは・・・?」
「そう、僕も誰かに会わないと行けないと思ってね・・・。」

そう言いながら、男性は青々とした空を仰いだ。どこか、遠くを見るような表情で。その目線は一体、どこへ向けられているのだろうか・・・よくわからない。
男性は目線を彼に戻し、「そういえば」と言って話題を変える言葉を漏らした。

「君を見たときからずっと思ってたけど、どこかで会ったような気がするんだ。」

今日出会ったばかりの初対面だというのに、男性はそんな事を言い出した。普通だったら絶対に有り得ない。何かのデジャヴだろう。
だがしかし、その言葉を聞いた彼も、

「奇遇ですね。俺も、何だかあなたに会った事あるような、そんな気がしていたんです。」

こんな偶然は有り得ないはずだ。誰かに会わなくてはならないという目的も、出会った事があるという事も、話す内容が100%一致するだなんて、奇跡に近いぐらいの勢いだ。いや、既にこれは奇跡といっても過言ではないだろう。
そして、彼はこう言う。

「もしかすると、会わなきゃならない人って、貴方なのかもしれないですね。」
「かもしれないね。僕も、今そう思ってたところだよ。」

何度も重なる偶然。二人は自然と笑い出していた。それを隣で見ている彼の彼女は、どうやら話に置いていかれているようで、クエスチョンマークをいくつも頭に浮かべていた。

「そうだ。僕達名乗ってなかったよね。」
「あ、そういえば・・・。」
「じゃ、今更だけど名乗るね。僕は藤沢浩太郎。君達は?」

藤沢浩太郎と名乗った男性は、彼らにそう促す。
彼の彼女は、ようやく話をふられたのにも関わらず、気付くのが遅くなり、少しあたふたしながら「柊里美(ひいらぎさとみ)」と名乗った。
そんな彼女を見て、彼と男性はクスクス笑った。そして、男性はもう一度彼に名乗ってもらうように促すと、彼は、こう言った。

「俺ですか?・・・俺の名前は、日比野京介!」


THE END......
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