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ゼノンさんとラチナスさんの話短く書こうと思ったら長くなっちまった。

「誕生日おめでとう!!」

歓声が上がる寮の中。そこは、死神部隊第一部隊が使用している寮。盛り上がっている場所は、ゼノンとラチナスが一緒に生活している部屋だ。特に広いわけでもなく、狭いわけでもない。それでも、その部屋は他のメンバーがいるおかげで随分と狭く見えた。部屋の中心に置かれたテーブルの上には、おいしそうなショートケーキが置かれていた。大きさは、直径30cmは軽くあるだろう大きさ。おそらく、メンバーたちが全員食べられるようにと大きなケーキを選んだに違いない。
そのショートケーキには、ちゃんと歳の分のロウソクがたてられており、すでに火は吹き消されている。ロウソクを取り外し、包丁で丁寧に人数分のケーキをカットし全員に分ける。そして、みんなで一斉に「いただきます」の掛け声をしてケーキを食べ始めた。

「何か・・・こうしてると、恥ずかしいな・・・。」
「何言ってんだよ、ゼノン!今日はお前の誕生日じゃねぇか!おめでたい日なんだから、もっと盛り上がろうぜ!」

恥ずかしそうにしているゼノンに、ラチナスはまるでお酒でも飲んだかのようにふるまった。ちなみにまだお酒は飲んでいない。テーブルに置いてあるのは、単なる炭酸ジュースだ。

「まぁ、祝ってくれるのは嬉しいけどね・・・。」
「だろ?それに、どうせお前は、恋人のライラちゃんからも祝ってもらってんだろ?もっと嬉しい気持ち出せってんだ!」

そう言った後、「よし!お前ら!誕生日プレゼントは用意したかぁ!?」と、ラチナスはメンバー全員に話しかけた。メンバーはもちろんだというように、ゼノンへの誕生日プレゼントを高々と上げた。ゼノンは「またものが増える」というように、ほんの少しだけうなだれていた。
そして、順番にゼノンにプレゼントを渡していく。何を上げたらゼノンが喜ぶのか不明なため、メンバーたちはみんな手造りの品物だった。しかし、何かがおかしい。一人ずつ中身を確認すると、何かが描かれている10cm四方のプレートなのだ。何が描かれているのかは不明。

「副隊長、それ、全部この板にパズルみたいに並べてみてくださいよ!」

一人のメンバーが、プレートをはめ込むための板を手渡しながらそう言った。こんな人口密度が高くなった部屋で、このプレートを並べたら、またひとつ狭くなるだろうにと感じつつも、プレートをうまく並べていった。
すると・・・

「こ、これって・・・俺か?」

すべてを並べると、なんと、ゼノンの似顔絵だったのだ。しかし、残念ながらあまり顔は似ていない。

「お前ら、絵がへたくそだな!全然似てないじゃないか!」

と、ラチナスは笑いながら茶化す。「それでも頑張ったんですよ!」と、メンバーは口ぐちに言い訳や描いたいきさつなどを話した。

「そういえば、ラチナス隊長は何をあげるんですか?」
「俺か?俺は・・・隊長の座を譲る!」

笑顔で言ったラチナスだが、一同はその発言により固まってしまった。

「な、何だよお前ら、何でそんなに固まるんだよ!」
「い、いや、だって、それ・・・プレゼントというより・・・。」
「引退って意味ですよね・・・?」
「馬鹿野郎!お前ら何言ってやがる!ゼノンに隊長の座を譲って、俺は副隊長になってゼノンをサポートするに決まってんだろ?!」

そんな事可能だろうかと一同は思った。

「でも、兄さん・・・俺が隊長なんて、無理がある・・・副隊長になって、ようやく慣れてきたっていうのに・・・。」
「無理なもんか!お前は俺よりも正しい判断をする。そのおかげで、俺やこのメンバーたちは何の問題もなく任務を続けてるじゃないか。」
「でも・・・。」

そうだとしても、隊長を担う自信がない。ゼノンはそう言う。
ゼノンは、10歳で第一部隊の隊員となり、その2年後に副隊長となった。部隊の中でいち早く悪霊の位置を把握でき行動できるため、ゼノンは副隊長として迎えられたのだ。

「自信がないとか言ってる場合じゃないぜ?実を言うと、俺はもう手続きは済ませてあるんだ。つまり、今隊長なのはゼノンだってことだ。」
「な!?何勝手なことしてんだよ兄さん!俺はまだ隊長になる気はないんだ!」
「そうはいっても、もう後戻りはできない。」

その言葉に、ゼノンは黙ってしまった。もうやるしかないんだ。ラチナスが勝手に自分を隊長にしてしまったという手違いはあるものの、隊長になったからにはそれなりの事をこなさなければ。ゼノンは心の中で誓った。

「いやぁ、しかし、これで副隊長も、今日から隊長か~!天国にいるエルグ隊長とレナン副隊長も、これを知って嬉しいんだろうなぁ~・・・。」
「天国・・・に・・・?」
「あ・・・。」

メンバーの一人はしまったと思い、手で口を押さえた。その様子を見て、ラチナスは無言で、発言をしたメンバーを殴った。
ちなみに、エルグとレナンとはゼノンの両親だ。ゼノンが5歳の時に、とある任務で強力な悪霊と戦い、命を落としたのだ。しかし、その事実をゼノンは知らない。

「どういう・・・ことだよ・・・父さんと、母さんが・・・天国・・・?」
「・・・・・・ゼノン・・・こっちに来い・・・話がある。」

ラチナスは、唇をかみしめながらそう言い、ゼノンを外へ連れて行った。

「兄さん・・・どう言うことだよ・・・父さんと母さんが天国って・・・2人はいつか帰ってくるんじゃなかったのか!?」
「・・・ゼノン・・・最初に謝っとく・・・今まで黙っててすまない・・・。」

ラチナスはそう言った後、ゼノンにすべてを話した。ゼノンが5歳の頃、両親は命を落とし、その事実を言おうとしたのだがなかなか言えず、いつか帰ってくると嘘を言い続けていた。メンバーから代わりに言ってやろうかと言われたのだが、自分から絶対に言わないでくれと制した。
その事を続けて10年もたってしまった。今まで嘘を突き通してきてすまない。黙っていてすまない。すべては、お前のためなんだ。ラチナスは必死にそう伝えた。

「・・・ふざけんな・・・俺がどれだけ兄さんの事信じ続けてきたと思っていやがる!!それなのに・・・全部嘘かよ!!何なんだよ!!何が『お前のため』だ!!何のためにもなってねぇだろうが!!!嘘ならもっといい嘘つけよ!!!当時5歳の俺になら『星になった』とでもいえば分かるはずだろ?!なのに、『帰ってくる』とかぬかしやがって!!!ふざけんじゃねぇよ!!!!」

長々と怒鳴られたラチナスは、ゼノンに何も言い返す言葉がなかった。黙っていたのは自分だ。上手く伝えられなかったのも自分だ。言い返す言葉などありはしない。

「もういい・・・こんな大事なこと黙っていた兄さんなんか・・・もう兄さんなんかじゃない・・・お前は、ただの俺の部下だ・・・兄弟でも何でもない・・・元々血何か繋がってないんだ、丁度よかったな!!!!」

そう怒鳴り散らすと、常に持っている通信機がけたたましく鳴り響いた。閻魔からの、任務の要請だ。
懐から通信機を取り出し、スイッチを押す。

『第一部隊に次ぐ、Z-849に巨大な悪霊が現れた。直ちに出動するように。以上。』

それだけ伝えられ、通信は途絶えた。

「任務の時間だ。仲間にも伝えろ。俺は先に行く。」

通信機をしまい、ゼノンは鋭く冷たい眼差しでラチナスを見つめながら言うと、シュンッという音とともに、ゼノンはその場から立ち去った。
ラチナスは複雑な思いを胸に、仲間にも出動するように伝え、ゼノンの後を追った。



「ここだな。」

着いた場所は、何年も前に廃墟された病院。どうやら、取り壊し作業をしていたようだ。その跡が生々しく残っている。取り壊された分はというと、全体的に4分の1程度か、それ以下か。取り壊し作業が始まったのだが、この先取り壊された形跡が全くないようだ。その証拠に、この病院の所々に蔓が長くのび、まるでしがみつくようにしてまきついている。
その屋上に、大きな反応があった。ゼノンは下から屋上を見上げると、黒く大きな生き物が、体をうねらせ時折り咆哮を上げている。その動き方は、まるでスライムの様。見ているだけでも、気分がすぐれなくなりそうである。
ゼノンは屋上へと瞬時に飛びあがり、そのものの真上で止まる。やはり閻魔の言った通り、大きな悪霊だ。下から見たときは、スライムのような動きに見えたそれは、真上から見たときは、タコのような動きをして、姿もタコのようだった。タコの足の様な触手を何本もだし、それをゆらゆらと揺らしている。様子からすると、まだこちらの存在に気付いてはいないようだ。
そこへ、ようやくラチナスと他のメンバーが辿り着き、円で囲むように位置についた。

「遅いぞ・・・まぁいい・・・こいつが今回の敵だ。足の様な触手が何本もあるから、それで攻撃してくるかもしれない。そのほか、咆哮で衝撃波を放っている。そのあたりも気を付けて攻撃に入るんだ。」

その説明をした後「攻撃開始」の合図で、第一部隊の攻撃が開始される。部隊全員は、自分たちの意思で攻撃をしたり、ゼノンの的確な指示で攻撃をしたりしていた。
ラチナスも、ゼノンが新しく隊長になったばかりなので、必死にサポートを続ける。しかし、先ほどの事で気持ちがもやもやしているようだ。少し攻撃にキレがない。

『当時5歳の俺になら『星になった』とでもいえば分かるはずだろ?!』

先ほどのセリフが、ラチナスの頭をよぎる。
そうだ。何でこんな簡単な事言えなかったんだ。成長すれば「星になった」という意味が理解できたはずなのに。

『お前は、ただの俺の部下だ・・・兄弟でも何でもない・・・元々血何か繋がってないんだ、丁度よかったな!!!!』

そのおかげで、ゼノンとはもうただの赤の他人になりつつある。確かに、元々赤の他人だった。それでも、今まで一緒に生活してきた。兄弟として。だけど・・・
ゼノンの言った言葉は、ラチナスの心に深く深く突き刺さっていた。だが、一番胸に突き刺さっているのはゼノンの方だ。両親が死んだ事を10年もたってから知ったのだから。それを考えると、余計に胸が苦しくなる。
そうやって考えてうなだれているラチナスを、悪霊に攻撃をしながらゼノンは見ていた。そして、そのラチナスに声をかけるが全く聞こえていない。こちらも攻撃しているので、近くに寄って声をかけに行くのは難しいから、ここから大声を上げて呼んでいるにもかかわらず、反応すらしない。
そんな反応のしないラチナスに、悪霊の触手が素早く伸びる。その切っ先は、鋭くとがった針の様。あのままではラチナスに刺さってしまう。

「ラチナス!!よけろぉおおお!!」

先ほどよりも大きく叫ぶと、少し遅れてようやく気付く。駄目だ、避けきれない。
ゼノンはラチナスを守るために、その触手よりも素早く移動し、ラチナスの前に立ちはだかった。それと同時に、鋭くとがった触手は勢いよくゼノンに突き刺さり貫通する。そして触手は、ラチナスに刺さることなくそこでストップした。

「ぜ、ゼノン・・・?」
「ぅ・・・がはっ・・・ばかやろう・・・何よそ見してんだ・・・任務の時は・・・他の事考えんなって言ったの・・・お前だろうが!!!」

その言葉を放った瞬間、触手はゼノンを突き刺したまま、大きく横にふった。その勢いで、ゼノンは触手からから抜け、遠くに飛ばされたのち、地面不時着して気を失った。地面にはゼノンの血がじわりと広がる。
そんなゼノンを見て初めて正気に戻ったラチナスは、目の前にいる悪霊に対して怒りをあらわにした。

「何しやがんだこの野郎ぉおおおおおおおおおおお!!!!」

そう叫び、怒り狂ったまま悪霊に殴りかかった。しかし、その悪霊は殴りかかってくるラチナスに対して、触手をひとまとめにして、逆に勢いよく殴りつけた。それに吹き飛ばされ、ラチナスも不時着し気を失った。



気が付けば、2人は救護施設にいた。他のメンバーも、この救護施設にいる。ちなみに救護施設とは、人間でいう病院。「救護施設」というと、軽い傷の治療を受けるところに聞こえるが、施設の外面も内面もしっかりした建物で、医療器具もしっかりと整われているので、人間が使用している病院となんら変わらないのだ。
その施設の一室にいる第一部隊の一人――ラチナスは、起き上って室内を見渡す。この一室は個室ではなかった。自分の周りに、多くのベッドが並べられて、そこに一つ一つに誰かがいる。誰か、と言っても見渡す限りは第一部隊のメンバーしかいない。彼らはどうやら軽傷の様で頭に軽く包帯を付けているものや、手首に包帯を付けているものがいた。そして、その状態で仲間同士で会話をしている。
自分はというと、自慢の右腕にギプスが巻かれ、動かないようにその腕を布を使って首からつりさげている。多少頭が痛むと思い、そっちに手を伸ばすと軽く包帯が巻かれていた。頭に関しては軽傷だが、腕に関しては重傷のようだ。

「あ、ラチナス隊長!お目覚めですか!」

メンバーの一人が言うと、他のメンバーたちもラチナスの方を見て寄ってきた。

「隊長・・・か、お前ら、俺は今副隊長だぜ?」

言いながら茶化す。その言葉にメンバー全員は、「あ、そういえば」と声をそろえて言った。
ちなみに、任務の事は閻魔大王が駆け付けてくれて、悪霊を回収してくれたとメンバーが説明してくれた。

「で、ゼノンはどうした?あいつ、一番重傷のはずだろ!?」

突然慌てて言うラチナスに、メンバーはゼノンは別の個室にいると伝えた。
ラチナスはベッドから降りて、メンバーが教えてくれた部屋へと足を運んだ。エレベーターを使い7階へと着き、「703号室」と書かれた部屋の扉を開けた。やはり個室なだけあって、室内はとても広々としている。ゼノンが寝ていると思われるベッドは、薄いカーテンで囲われていた。まるで、何かから遮断するかのように。そのカーテンをゆっくりとあけると、ゼノンがリズムのいい寝息をたてて眠っていた。よくよく見ると、体中に包帯が巻かれていた。自分よりも重傷だって事がよくわかる。
しばらく見つめているとゼノンが目を覚ました。目だけであたりを見回すと、ここが救護施設だと気付き、飛び上がるように起き上った。しかし、そのせいで傷が痛み、ラチナスの手を使って再びベッドに横になった。

「よかった・・・ゼノンが無事で・・・。」
「無事なものか・・・誰のせいでこうなったと思っていやがる・・・。」
「・・・・・・。」
「ま、隊長になったにもかかわらず、部隊一つまとめられなかった俺にも責任があるがな・・・。」

自分にも責任はあるといいつつも、その言葉はどこかラチナスに向けた言葉にしか聞こえなかった。

「ゼノン・・・お前は責任感じる必要はねぇよ。俺が、全部悪いんだ・・・。」
「そうだな・・・お前が余計な事言わなければ、こんな事にはならなかったもんな!!!」
「ホントに、すまない・・・。」

その言葉に、ゼノンはそっぽを向き大きくため息をついた。

「今はお前の顔なんか見たくない・・・声も聞きたくない・・・今すぐここから出て行け。」
「で、でも・・・。」
「『心配だからついててやる』とでもいいたいのか?いつまで俺を弟扱いしてるんだ!?言っただろ?『兄弟でも何でもない』って!!だからさっさと出てけよ!!!目障りなんだよ!!」

そこまで言われたラチナスは、しぶしぶと室内を出て行くしかなかった。
部屋から出て、扉をゆっくりと閉めると、ラチナスの目から一筋の涙がこぼれおちた。自分の無情さと、ゼノンに突き放された悲しみが入り混じった感情がこみあげ、それが涙となってこぼれたのだ。そして、その感情はだんだんと高まり、ラチナスは座り込んでしばらくそこですすり泣き、時折声を漏らした。
その声は廊下に響き渡り、ゼノンが眠っている病室にも、その泣き声が聞こえてきたという・・・。




って言う内容を今まで書きたくてしょうがなかった。
ゼノンさんがいつから、ラチナスさんの事を呼び捨てで呼び始めたのかを伝えたいだけなのであったww


そんな感じ。
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