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小説「-Ib-」Episode3

-Ib- Episode3


長い階段を下りていくと、壁の色や床の色がだんだん赤色になっていき、段の終盤に差し掛かったところから、真っ赤なものへと変わった。といっても、絵の具のように赤いわけではない。黒が混じったような不気味な赤だった。
赤といえば、自分の服のリボンも、スカートの色も、そして、靴の色も赤い。というか、壁と床の色とよく似ていた。一瞬溶け込むことができるかもしれないと思ったが、着ている服は白色をしているので、溶け込めるわけもなかった。
最後の階段を下りると、何か黒いものが通った気がした。気になって追いかけてみたが、そこに黒いものは存在しなかった。あるのは『息吹』と書かれた絵画があるだけでだった。その絵画は、白い鳥が、大きなラッパを吹いているように見えた。背景には、雨が降った空を白い鳥が飛んでいるようなもの。そして、ピンク色の雲。何を表しているのかは、やっぱりイヴにはわからなかった。
通路を抜け、壁と床よりも彩度の高い赤色の扉を開けて中に入った。その部屋は広く、作品がたくさんあった。右に赤い石造、タイトルは『あ』。左に青い石造、タイトルは『うん』。その石造の通り、『あ』の石造は「あ」というように、口を開けていて、『うん』の石造は「うん」というように、口が閉じていた。「阿吽の呼吸」ともいうのだから、何か対になるものを作りたかったのだろうか?
『うん』の向こうには絵画があった。手前にあるのが『タバコを吸う??』。漢字が読めない。奥にあるのが『心の音』。その『心の音』は一本線しかひかれていなかったが、イヴが近付きタイトルを読み上げたときに、心臓の音のようなものが聞こえ、尚且つその線が波を打った。病院でよくある心拍数を測る機械のような絵画だった。
『あ』の向こう側にも絵画があった。手前には『心の傷』というタイトルで、青いハートに、絵ではない本物の矢が刺さっていた。これはイヴにも理解できそうだった。心に傷を受けると、胸に矢が刺さったような痛みが走る。その痛みは、受けた傷によって違う。自分にとって、とても辛いもので一生背負っていかなければならないものだったら、この心の傷はいつまでたっても消えはしない。逆に、受けた傷が軽ければ、その痛みは1~2日で消えてしまうだろう。絵画に説明は書かれてはいないが、おそらくそういうことを表現しているのだと、イヴは頭の中で思考を巡らせた。
その奥には、美術館でも見たあの赤い服を着た美しい女性の絵画だった。タイトルは『赤い服の女』。綺麗な茶色の髪の毛を、腰付近までに延ばしている女性は、本当に美しく思えた。しかし、あの美術館にいた客の話では、ゲルテナは実在する人物は絶対に描かなかったそうだ。そうなると、この女性は妄想の女性。このぐらいの美女がいたらいいなと想像して描いたのかもしれない。
ひとしきり眺めた後、踵を返してその絵画から離れた。その瞬間、ガラスが割れる音と、大きく落ちる音が聞こえた。振り向くと、あの美しい女性が絵画から上半身を出していたのだ。そして、イヴを見つけた直後、その美しい顔を一層恐ろしい顔へと変貌させ、手を使って額を引きずり、イヴに襲ってきた。その姿はまるで、怪物の様……。青褪めたイヴは一瞬動けなかったが、逃げなければ捕まってしまうため、動けなかった体を無理やり動かし、その怪物のように追いかけてくる赤い服の女から逃げた。確か、部屋の中心に、扉があったはずだ。そう思い、扉の前まで行くが、鍵がかかって開かない。しかし、赤い服の女は止まることなく追ってくる。どこに鍵があるというのだろうか。
そういえば赤い服の女に追われる前、その周辺に何か赤いものが落ちていた気がする。イヴは、赤い服の女が出てきたところに走っていくと、赤い鍵が落ちていた。これだ。この鍵だ。
すぐに赤い鍵を拾い、逃げながらもう一度あの扉の前に立ち、鍵を刺し扉を開け中に入った。数秒して、扉を3回叩く音が聞こえた。まさか、あの『無個性』のように中に入ってくるのではないのだろうかと思いびくびくしていたが、中には入って来る様子はなかった。ひとまず安心をして、呼吸を整えた。
入った部屋は狭く、本棚がいくつかあった。イヴは数冊取り出しては中身をぱらぱらと捲りしまっていた。
ゲルテナが描いたいろいろな絵が載っている本に、いろいろな美術館の写真が載っている本など……。見ていると、本の間に紙切れが挟まっていた。それを取り出すと、こう書いてあった。

“た の し い ?”

まるでこちらの状況をわかっているかのような言葉。しかし、楽しいわけがなかった。ここまで来るのに、どんな恐怖に見舞われたか。この言葉は、イヴをあざ笑っているのだろうか?
そして、こんな本も見つける。

『キャンバスの中の女たち
 ここの女性は すぐに人のものを欲しがる
 目をつけられると 大変??である
 なんせ彼女たちは 自分が満足するまで
 ??に 追いかけてくるからである
 どこまでも どこまでも どこまでも……
 弱点があるとすれば 彼女たちは自分たちで
 扉を開けることが できないことだ』

読めない漢字があったが、大体内容はつかめた。あの絵画の女性たちは、しつこいほどに追ってくる。扉の向こうへ渡ってしまえば、退けることができると。
きっと、これから先同じような事が起こるかもしれないと感じたイヴは、この文章を心に留め、絵画の女性にあったらすぐに扉にあるほうへ逃げようと誓った。
イヴはこの部屋を出ようと、扉のドアノブに手を伸ばした。しかし、扉には鍵がかかっていた。これでは外に出られない。どこかに鍵はないのだろうかと、本棚を探したが、見つからない。見つけたとするなら、『うごくえほん』とクレヨンで描かれた絵本だけだった。
しかし、どんな内容か気になったイヴは、その動く絵本を見てみることにした。

『うごくえほん  作/絵 XXXX
 “うっかりさんとガレッド・デ・ロワ”』

イヴはページを捲った。


うっかりさんとガレッド・デ・ロワ

クレヨンで描いた赤い膜の上に、黒いクレヨンでタイトルが書いてあった。
そして、何故か歓声と拍手の音が鳴る。
それがやむと赤い幕は開いていき、BGMも鳴りだしお話が始まった。

「お誕生日 おめでとう!」
「ありがとう!」
「今日は あなたのために ガレッド・デ・ロワを作ったの!」
「なにそれ?」
「このパイの中に コインが入っていて… 食べたパイの中に コインがあったら… その人は幸せになれるのよ!」
「おもしろそう!」

「でしょ? じゃあ 切り分けるよー」


「さぁ 好きなの選んで!」
「いただだきまーす!!」


「もぐもぐ…」
「あっ…!」
「どうしたの?」
「なにか 固いもの… 飲み込んじゃった!」
「あはは うっかりさーん!」
「きっと コインだ!」

「どうしよう…」
「コイン小さいから 大丈夫よ じゃあ 片づけてくるね!」

ピンクの女の子が片づけに廊下へと歩く。

「ママ どうしたの?」
「書斎のカギを 知らない?」
「しょさいのカギ? それならいつも そこのテーブルに… ……あれ? コインだ…… このコイン たしか… パイの中に 入れたハズなのに… もしかして……」
「どこ行ったのかしら… お父さんに 怒られちゃうわ」
「どうしよう……」

ピンクの女の子はお皿に載せた包丁を、床に落とした。

「わたしってば うっかりしてたわ」

包丁を片手に、友人たちがいた部屋に戻る。赤い幕が閉じ、ひどく切り裂く音が何度か鳴った。
そして、赤い何かを体に付着させ、赤い幕からピンクの女の子が出てきた。

「カギ 見つけたよ! 今 開けるね!」

そうして、何かの音が鳴った。音からすると、扉の鍵が開いたような音だった。
ふとイヴは、手に持っていた絵本がないことに気が付いた。いつの間に自分がしまったのだろうと探してみるのだが、その絵本が見当たらなかった……。
とにかく、鍵は開いたのでここから出られる。
扉から出ると、目の前には水の入った花瓶と、花瓶が描かれた絵画があった。イヴは、バラの花を1枚散らしているので、ちょうどいいと思いバラを花瓶に活けた。4枚は5枚に戻った。よく見ると、花瓶の水はまだたくさんあった。というか減っていない。どういう事かとキョロキョロして、見たのは隣の花瓶の絵画のタイトル。それは『永遠の恵み』だった。つまり、この花瓶の水は永遠になくならないのだ。なんて便利なのだろう。
そうして、気分を回復したイヴは、左右の道をみて左に進んでみた。扉を開けると再び廊下が。右側には段差があり、その段差には水の入っていない花瓶が置かれていた。水の入っていない花瓶をおいて、何か需要があるのだろうか?さっぱりわからない。
壁には青い鍵を手にした時にあった張り紙と全く同じものが貼られていた。
先に進むと、赤い扉が右に見えた。しかし、その扉は鍵がかかっていた。どこかに鍵があるのではないのかと探していると、絵画のないタイトルプレートだけが残された壁が視界に入る。そのプレートには『青い服の女』。そして、周辺には青い花びらが落ちていた。何の花びらなのだろうと見ていると、床に赤いものが見えた。それは、まぎれもなく人の血だった。絵の具のように不自然な赤ではない。どこかに自分以外の人がいるんだと言う思考と、生々しい血を見たときの恐怖が頭の中で交差する。
一度この通路を離れ、水の入った花瓶の場所に戻り反対側の道に出た。すると、通路に人がうつぶせになって倒れていたのだ。近付いてみるとまだ息はあるが、とても苦しそうにしていることがわかる。思い返せばこの人は、美術館にいたあの菫色の髪色をした男性だ。どうしてこんなところに倒れているのだろうか。そう問いたいが、答えられそうにもない。
様子を見ていると、その男性の手に赤い小さな鍵が握られていた。イヴはそうっと男性の手から小さな鍵をとった。
さっきの場所に行き、通路を歩き、赤い扉がある場所で鍵を使った。施錠が外れた音が聞こえ、中に入ることができた。その中に入ると、やはりあの青い花びらが散らばっていた。奥を覗くと、あの赤い服の女のように、上半身だけを出した絵画が青いバラをむしって遊んでいる。バラという事は、今自分でもっているこのバラと同じ効果のものであり、先ほど倒れている男性のものかもしれない。
そう思って、勇気を出して近付いた。すると、そのバラを放置してイヴに襲ってきた。しかも、赤い服の女よりも速い。その速さからうまく避け、小さくなってしまった青いバラを急いで拾い、一目散に逃げた。扉を開けて外に出る。ひとまず安心だと肩をなでおろしたが、隣の窓ガラスを叩く音が二回響き、次の瞬間ガラスを割り青い服の女が出てきたのだ。再びイヴは通路の向こう側の扉まで走った。
そうして、ようやく安堵の息をつく。拾った青いバラを、花瓶に活けると瞬く間に元気になり、花弁の枚数は10枚になった。自分のバラよりも、枚数が多いのはなぜなんだろうと思ったが、きっと倒れている男性は大人だから枚数が多いんだろうなと自己解釈した。
イヴは、倒れている男性のもとへと足を運び、様子を見る。いまだ苦しそうにうめき声をあげている。その男性に、そっとあの青いバラを持たせた。すると、うめくのを止め、整った息継ぎに変わった。

「…………あら?苦しくなくなった………ん?」

上半身だけを起こし、ようやく自分の視界にイヴがいることに気が付いた。

「うわっ!」

声を裏返らせて悲鳴を上げた男性は、勢いよくイヴから数メートル離れて、さらに青いバラをポケットにしまってこう言った。

「な……今度は何よ!もう何も、持ってないわよ!!」

低めなしかし、女性のように聞こえる声で、男性はイヴを睨みつけた。
その顔が怖かったのか、イブは少しだけ怯えた。

「あ……あれ?アンタもしかして……美術館にいた……人!?そうでしょ!あぁ良かった!アタシの他にも人がいた!」

その男性はそういって満面な笑みと、安心感の満ちた顔でそう言った。そのおかげで、イヴも安心した。どうやらこの人は悪い人ではないようだ。男性なのに、女性の言葉を軽々と使っているところはちょっとおかしいが……。
イヴは、今自分に起こっていること、ここまで一人で来たこと、わからないことだらけが続いている事、そして、青いバラを必死に取り返したこと、すべてその男性に話した。

「そっか……じゃアンタも、何でこんな事になっているかはわからないワケね。アタシの方も、大体同じ感じよ。」

男性はイヴの話を聞いてそう答えた。この男性も、イヴと同じような道を辿ってきたようだ。といっても、すれ違ったり途中で出会ったりはしてないのでおそらく彼の場合は、突然この場所に連れてこられたというのが正しいのかもしれない。

「おまけにこの薔薇……花弁ちぎられると、自分の体に痛みが出てきてさー。」

男性は青い花弁をポケットから取り出し、ため息をつきながらそう話した。やはり同じだった。イヴの赤いバラのように、花弁がなくなるごとに、体に痛みが出るという症状だった。

「さっきは死ぬかと思ったわ……取り返してくれてありがとね。」

そう言って、綺麗な手で男性はイヴの頭を優しく撫でた。

「………で、とりあえずさ………ここから出る方法を探さない?こんな気味の悪いところ、ずっといたらおかしくなっちゃうわ。」
「うん。それに私もここから出なきゃって思いながら進んできたし。」
「そうだったわね……でも偉いわ、アンタまだ幼いのにこんなところを一人で来たんだもの。」
「偉くないよ。だってすっごく怖かったもん。」
「それでもここまで来たってことは、アンタは勇敢ってことよ。」

男性はにっこりと笑ってイブを励ました。

「そういえば、まだ名前聞いてなかったわね。アタシはギャリーっていうの。アンタは?」
「私……イヴ。」
「イヴ……イヴって言うのね。」

ギャリーと名乗った男性は、「いい名前じゃない」と言わんばかりの表情をして、イヴの名前を繰り返した。

「子供一人じゃ危ないからね……アタシも一緒に、付いて言ってあげるわ!行くわよイヴ!」

何て心強い人なんだろう。イヴは一気に緊張がほぐれたような気がした。
そんな心強いギャリーを前にして歩き出したが……

「ぎゃーっ!」

前言撤回。この人じゃ心配な気がする。
ギャリーはイヴも見たあの変な顔が描かれた絵画から吐き出される、青い液体に非常に驚いてしりもちをついてしまった。
そして、しばらく固まったあと言葉を発する。

「い……今のは、ちょっと驚いただけよ!本当よ!」

めちゃくちゃ怯えて驚いたくせに。

「とにかく!こういう変なのがいるから気を付けて進むわよ!」

ほんの少しまだ怯えながらも、ギャリーは強気にそう言った。
あぁ、先が思いやられる……。


続く
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