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小説「Ib」Episode5

-Ib- Episode5


扉を開くと、目の前には壁があった。行き止まりかと周りを見てみたが、さっきいた場所よりも広そうなところに付いたようだ。だが左を見てみると、壁には不気味に赤い服の女、青い服の女、そして、緑の服の女に黄色の服の女の絵画が飾られていた。絶対これらは動き出すに決まっている。それに、無個性だって数体置かれている。今は全く動く気配はないのだが、警戒は必要だ。
今動くとするなら絵画の方だと思い、右側にある無個性が置かれているほうへと歩きだした。今、無個性は動くことはないのだが、ふと見覚えのないものが混ざっていた。今まで見てきた無個性は、女性の体だった。しかし、一体だけ男性のものがあったのだ。何故男性なのかは知らないが、きっとこれもいつかは動いて襲ってくるのだろうとその場を移動した。
ふと、左を見ると、扉があった。この先に行けるのかと思ったのだが、当然のごとく鍵がかかっている。仕方なく元の道へ戻って進んでいくと、小部屋があった。窓が取り付けられていて、その窓に黒いものが通った気がした。しかしこの部屋も当然鍵がかかっている。そうして、奥に行くと絵画がたくさん。しかも服を着た女ばかり。不気味すぎてここから早く出たいぐらいだ。
その中に、一つだけ違う絵画があった。タイトルは『吊るされた男』。全く持って読んで字のごとしの絵画だった。

「この絵、美術館にあったやつだわ。」

と、ギャリーがつぶやく。
そういえば、ギャリーはこの絵画を観ていた。何故ギャリーは、この絵を観ていたのだろうと疑問が走ったが、今はそこに注目するところではない。よく見ると、この『吊るされた男』の服に数字が書いてあった。そのまま見ると、「5629」なのだが、吊るされているのでおそらくこの数字は「6295」だ。この数字が何を意味しているのか分からないが、ここから出る方法を考え、尚且つ警戒しつつも、この部屋の中を歩いた。
そして、二つの部屋を見つける。一つは鍵がかかって入れなかった。もう一つは、数字を入力すると入れる部屋だった。そこで、さっきの事を思い出し、『吊るされた男』の服に書かれた「6295」を思い出す。その数字を入力すると、鍵が開いた音が聞こえ中に入ってみた。その部屋は小さな部屋で、椅子と台に置かれた花瓶が描かれたキャンバス、そして、実物の台に置かれた花瓶があった。しかし、椅子には誰もいないのに、人の気配がした。誰かがここに座って、この絵を描いているんだと思った。
となると、今あるあの台に置かれた花瓶の場所は目線的に不可能だった。

「ギャリーだったらどこに置く?」
「そうね……アタシならこうするかしら。」

と、ギャリーが動かすと、どこかでガラスが割れた音が聞こえた。きっと服を着た女が動き出したのだ。この部屋を動きたくはないが、ここからでは先に進めないため、人の気配がする椅子の目線に会うように、台を動かした。すると、どこかで何かの音が鳴った。隣の部屋のカギでも開いたのだろうか?
先ほどのガラスの音を警戒しつつも、外に出ると遠くのほうで赤い服を着た女がうろついていた。悲鳴をあげそうになったが、それよりも外にはあのマネキンの頭部が置かれていたのだ。

「……さっき、こんなところにこんなものあったかしら?」

そんな疑問を持つより、隣の部屋に行ってみることにした。しかし、扉の前に来ると、『この部屋にある 女の絵の数を答えよ』と問われたのだ。

「そ、そんな!不気味だと思って数えてないわよ!」
「でも答えないと中に入れないよ?」
「し、仕方ないわね……。」

動いている赤い服の女も含めて、遠くから数えはじめた。
入り口付近にあった絵画は4枚、そして奥にあった絵画は10枚。全部で14枚だった。
その数字を、さっきの部屋に戻って数字を入力すると鍵が開いた。入ると、台とその上に置かれている花瓶、壁には貼り紙、そして本棚があった。
花瓶には、少量の水しか入っておらず、一人分の花を活けるのが精いっぱいのようだった。しかし、現在イヴとギャリーのバラは元気そのもの。不気味で気分が悪いが、体調が悪いわけではなかった。
壁についている貼り紙には、

『作品にはお手を触れぬよう お願いいたします
 万が一 備品や作品に何らかの損害を与えた場合は
 あなた  を持   賠 させ  ます』

というように、所々字が抜けていた。要するに、「触るな、壊すな」と言いたいのであろう。
本棚には、『楽しい毎日』というタイトルの本があった。

『美術館は ちょっと不気味な遊園地
 おかしなものが たくさんあるのよ
 ここで遊んでいると
 あっという間に 1日が 終わってしまうの
 とっても 素敵でしょう?
 だからあなたも ここにいれば?
 大丈夫 みんなが いるから』

「ここにいるとすぐに1日が終わってしまうのね……ここにいるのなんてまっぴらごめんだわ。」
「うん、早くここ出ないとね。」

外に出て、窓があった部屋に来ると、やはりまだ鍵がかかっていた。どうしたものかと思いながら、奥のほうへと足を運ぶと、扉があった。先ほどの音は、この扉の鍵が開いた音かもしれない。
ドアノブに手をかけ回してみると鍵が開いていて、中に入ると奥に鏡が壁にかかっているだけのちょっとだけ広い部屋だった。鏡に近付くと、遠くでまたガラスの割れる音が聞こえた。服を着た女がどんどん動き出しているのが分かる。とにかく、鏡を見ればなるほど普通の鏡だと言わんばかりだった。
後ろを振り返ると、マネキンの頭部が扉の前を塞いでいた。

「なによコレ……いつの間に部屋に入ってきたのよ……。」

動かそうにも動かせないマネキンの頭部。どうしようもないので再び鏡の前に立つ……

「………………えっ?」

マネキンの頭部が、ギャリーの肩付近にいた。

「ぎゃーっ!!」

思わず大きな悲鳴を上げて、ギャリーはしりもちをついた。

「なっ、なによ、コレ……!」

そうして、ギャリーは驚愕を怒りに変えて、そのマネキンを蹴り飛ばそうとした。

「待ってギャリー!壊さないで!さっき貼り紙に、美術館の物は壊しちゃだめだってこと書いてあったじゃない!それに……今のギャリー怖いよ……。」
「………わかたわよ、イヴ。ちょっと、大人げなかったわね。さ……じゃあ、いきましょ。」
「うん……。」

しかし、この部屋を出るのは少々苦痛な気もした。外にはきっと、服を着た女がうろついているだろう。
外に出ると、やはりうろついている服を着た女は増えていた。しかも、結構な数だ。そして、緑の服を着た女と目が合う。赤の服や青の服よりも、いっそう早く追ってきたのだ。ギャーギャー騒ぎながら、逃げるギャリーとイブ。といっても、騒いでいたのはもちろんギャリーだけだが。
ふと鍵が落ちていた。迷うことなく拾うと、その近くにあった赤い服の女が動き出した。再びギャーギャーと悲鳴を上げるギャリー。接触せずにうまく避け、スピードの速い緑の服の女からも一目散に逃げ、拾った鍵を使い窓が付いている部屋に走りこんだ。

「あー怖かった……。」
「私も怖かったけど……ギャリー……ちょっとうるさい。」
「……ごめんなさい。」

確かに悲鳴を上げるほどだが、さすがにうるさかった。
部屋の中には、美術館にもあった『指定席』というタイトルのソファーがあった。どうやら座れるようだ。
近くにキャンバスがあり、それにはこう書いてあった。

“疲れたなら ゆっくりお休み?
 もう苦しむことも なくなるから”

一体どういう意味なのだろうか?ここで一生を終えろとでも言っているように見えるが、おそらく二人にはわかってはいない。だが、この文章を読んで、ここで何かが起こるのではないかとは思ったはずだ。
部屋の隅には本棚がいくつかあり、左の隅の窓際にある本棚は動かせるみたいだとギャリーは言った。
窓から服を着た女が侵入することもあると思ったイヴは、右に動かしてほしいとギャリーに要求した。

「オーケー。じゃあ、ちょっと離れてて。」

そういって、本棚を動かした。

「窓が隠れちゃったわね。ま、いっか。」
「うん、あの動く絵画が窓から中に入ってくるかもしれないし、それでいいよ。」
「あら、そんなことも考えてたの?イヴって頭いいわね!」

壁には大きな絵画が飾られていた。その絵画のタイトルは『ふたり』。見覚えのある人物だ。
この二人は…………!

「どうしたの、イヴ?」
「この絵、パパとママだ……。」
「え?!この絵の人、イヴのパパとママなの?」
「うん。」
「へぇ………確かに、イヴに似てるかも……。でもなんで、こんなところにそんな絵があるのかしら?」

そう疑問をどこかに問いかけると、イヴはだんだん悲しそうな顔になった。

「ねぇギャリー、パパとママ、どこにいるのかな……?」
「うーん……それはちょっと、アタシにもわからないわ。」
「そうだよね……わからないよね……。」
「だ、大丈夫よ。きっと、どこかにいるって!」
「うん……パパ、ママ……どこにいるの……。」

疑問符をつけずに問いかけるイヴの目に、うっすらと涙が浮かび上がってきた。

(結構気丈な子だと思ってたけど、さすがに参ってきてるわね……。)

イヴはまだ9歳の女の子。両親が恋しくないはずなどなかった。途中までずっと一人で、ギャリーと出会って少しは心細い気持ちは晴れたが、やはりイヴは両親に早く会いたいようだった。
しかし、ここにいてはどうにもならないので、この部屋の外の状況がとんでもないことになっていると想像しつつも、ドアノブに手をかけた。だが、扉が開かないのだ。押しても引いても全く開かない。

「え……ウソでしょ?カギは開けっ放しのハズだけど……。」

そして、外から殴るような音が3回鳴った。

「な、なに、この音……外から?」

もう一度殴る音が3回響く。

「ドアの前に誰かいるわ……イヴ……注意して。」

ドアから入ってくると思ったのだが、殴る場所を変え、こんどは別の場所からぶつかる音が聞こえた。その音をたどると、両親の絵画付近から聞こえ、そしてその瞬間、大きな穴をあけ服を着た女が入ってきたのだ。色は黄色。
この穴から入ってきたという事は、他のものも入ってくるに違いないと思った。しかし、ここから出られる通路にもなった。ギャリーはイヴを守ろうと、イヴの手を握って服を着た女から逃げ穴に近付いた。そして、イヴを先に行かせ自分も急いで外に出る。
しかし、そこは地獄絵図だった。すべての絵画と、置かれていた無個性の数体が動きだし、二人に向かって襲ってくるではないか。扉に入って時を過ごそうにも、マネキンの頭部が扉の前を塞いでいるため中に入ることができなかった。
再び、ギャリーはイヴの手を握って走り出した。確かまだ扉があったはずだ。一番最初に見つけたあの鍵のかかっていた扉。あそこなら逃げ切れるかもしれない。
追いかけてくる無個性や服を着た女たちに捕まらないように、一目散にその扉へと走った。すると幸運なことに、扉が開いていたのだ。迷うことなく二人はその扉の中へ入っていき、勢いよく扉を閉めた。そして、通路の途中まで移動し、二人は止まる。

「はぁ……はぁ…………こ…………………………ここまで来れば……大丈夫でしょ……。ザマぁみなさい!」

ギャリーは激しい息切れをした後に、閉めた扉に向かってドヤ顔を決めた。
そんなドヤ顔をしたギャリーが、「さてと………」とつぶやいた瞬間の後ろでは、イヴが座り込んでしまっている。

「それじゃあ先に……ってイヴ?」

心配になって、近付き自分も座り込んでイヴの様子を見た。

「どうしたの?大丈夫?」

イヴは何も話さず、そのまま崩れ落ちるように倒れてしまった。

「イ、イヴ!?ちょっと、しっかり!イヴ!イヴッ!!」



自分が走る音、時計の指針が鳴る音、そして扉を急いであけた音。
イヴは小さな空間の中にいた。目の前の扉から、大きな音が響く。後ずさりながら、後ろの扉を開けた。しかし、また小さな空間。扉から大きな音が響く。

(早く逃げなきゃ……!)

しかし、後ろの扉はなかなか開かない。大きな音はさらに大きくなっていくような気がした。
そしてようやく扉が開き、イヴは通路を走った。走って走って、走りついた扉の先には、赤い服の女と、無個性と、マネキンの頭部がそこにいた。もう逃げる場所などない。

「あ、ああ………。」

その三体は、だんだんイヴに近付いてくる。

「来ないで……や、やだ……。」

後ろの扉は開かない。

「い、いや………。」

もうだめだ。そう思ったとき、何かの音が二回なった。



イヴは勢いよく上半身を起こした。何となく寒い。先ほどの夢を見て自分は汗をかいていた。
その様子に気付き、ギャリーがイヴに近付いてきた。

「おはよ、イヴ。気分はどう?」
「……怖い夢を見たの……。」
「そう……かわいそうに。まぁ、無理もないわね……。あんな怖い目にあっちゃったら……ね。起こせばよかったかしらね。ごめん、気が付かなくて……。」

ギャリーは申し訳なさそうにイヴに謝った。

「イヴ、そのコートの左側のポケット、探ってごらん?」

ギャリーに言われ、イヴはコートの左側に手を入れて中を探ってみた。すると何かが入っていた。取り出してみると、ギャンディーだった。キャンディーを包むビニールには、レモン味と書かれている。

「それ、あげるわ。食べてもいいわよ。」
「うん、ありがとう……ギャリー……あと、もうちょっと休んでからでいい?」
「そうね。じゃ、もうちょっと休んでから、出発しましょ。」

そういって、ギャリーは本棚の場所へ行ってしまった。
この部屋には本棚以外に、『無題』というタイトルの絵画に、

『美術館での禁止事項
 大声での会話は 禁止
 写真の撮影は 禁止
 飲食の持ち込みは 禁止
 作品に触れることは 禁止
 万年筆の使用は 禁止
 館内で走ることは 禁止』

と書かれた張り紙があった。しかし、『館内で走ることは 禁止』は別の言葉で書いてあったような気がした。確か……『ここから出ることは 禁止』と。気のせいかと思い、ギャリーのコートを拾った。ギャリーのコートはボロボロだった。
そんなコートをギャリーに近付き手渡した。

「あら、コート……わざわざアリガトね。」

ギャリーはイヴから手渡されたボロボロのコートを着た。

「ギャリーのコートってボロボロだね。」
「ちがうわよー。これはワザと!そういうデザインなの!……まぁ、確かに長年着てるから、ボロくはなってきてるけど……。」
「なぁんだ、やっぱりボロボロじゃない。」
「だからちがうって言ってるでしょ……もう……。」

そんなありきたりな会話を、しばらく続けた。のどが渇いたから花瓶の水が飲めるのか(もちろん冗談だが)という話や、美術館はコリゴリだという話。美術館に居た人たちの行方の話や、ギャリー自身に配慮が足らなかったという話。ギャリーの女性のような喋り方の話や、ギャリーがここの美術館に来た話。年齢の話や、イヴがいいとこのお嬢さんじゃないかという話。そして、ギャリーがこの美術館にどうやって来たのかという話。いろいろな話をした。会話しているときのイヴは、本当に楽しそうにしていた。
しかし……

「迷惑かけてごめんなさい。」

自分が先ほどの事で気を失った事もあるのか、楽しそうだったイヴの表情は暗くなってしまった。

「そんな謝ることないって!イヴのせいじゃないでしょ!」
「でも……。」
「仕方ないわよ、まさかこんなことになるなんて誰も予想してなかったんだから。」
「うん……。」
「ホラ、元気出して!そんな暗くなってちゃ、可愛い顔が台無しよ?」

そういって、ギャリーは優しくイヴの頭を撫でてあげた。その手がとても暖かくて、イヴの表情に笑顔が戻り始めた。

「よかった。イヴがちょっとでも元気になって。でも、よく考えたら、イヴはアタシと会う前まで一人で歩いてたのよね……たいしたもんだわ、ホント。」

ギャリーはさらにイヴを褒めたたえた。

「疲れたら我慢しないですぐ言ってね?遠慮なんてしなくていいから!」

初めて会った時よりも、ギャリーはとても頼もしくなった。出会ったばかりのギャリーは、何かが動いたりするたび悲鳴を上げてしりもちをついていた。
だが、あの恐ろしい地獄絵図を駆け抜けるとき、ギャリーは悲鳴一つ上げずにイヴを守るので必死になっていた。その姿は、イヴから見たら勇敢な王子様に見えた。
起きた後も、キャンディーをくれたり、いろいろお話してくれるし、イヴにとってもう一人の親になりゆる人に思えた。
全く赤の他人だというのに、ギャリーはここまで優しくしてくれる。こんな人に出会えて、なんて幸せなのだろう。
そう思った後、イヴはギャリーを見つめた。

「…………ん?どうしたの?」

見つめるイヴに気付き、ギャリーは問いかけた。
イヴは、いたずらっぽくただ見つめ返してみた。すると、だんだんギャリーが困った顔になっていった。

「あ、あの、イヴ……アタシ、なんかした?ちょっと、怖いんだけど……。」
「フフ、ギャリー面白い!」
「あら、見つめてただけなのは、アタシをからかってたのね!大人をからかうと、ひどい目に合うわよぉ~?」
「えへへ、ごめんなさい、ギャリー。」

イヴは楽しそうにギャリーに謝った。

「もう、イヴったら……そんなに元気ってことは、もう出発して大丈夫なの?」
「うん、大丈夫!だって、ギャリーが一緒だもん!」
「あら、ありがとうイヴ。じゃあ、行きましょうか!」

そうい言い、ギャリーはイヴの手を握り、扉を開けて外に出た。
美術館での恐怖は、まだまだこれからだ。


続く
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