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小説「Ib」Episode7

-Ib- Episode7


メアリーが仲間に加わり、共に移動しようとした時、ふとイヴは何かを思い出した。

「ねぇ、メアリーこっちに綺麗な絵画があったの。見てみる?」
「綺麗な絵画?うん!見る見るー!」
「ちょっとイヴ、早くここから出ないといけないんだから……。」

と、少し呆れつつも、『月夜に散る儚き想い』の絵画がある場所まで小走りしていくイヴとメアリーについていくギャリー。しかし、呆れつつもその2人の様子はほほえましく思えた。やはり、同じぐらいの女の子と一緒にいるからなのだろうか。
絵画にたどり着くと、メアリーは歓喜の声を上げた。

「わぁーきれい!これなにかな?」

メアリーは目を輝かせながらギャリーに問う。

「桜か梅じゃない?どっちかわかんないけど……。」
「ふーん……食べられるの?」
「………いや、これ花だから。」
「なーんだ!」

メアリーはこの花を、食べ物だと思ったのだろうか?いや、そうだとしてもこれが食べ物と思えるほどのものではない。この時、ギャリーはとても不思議な子だと感じた。
そして、さらにイヴは『決別』というタイトル(今は『や め ろ』に変わっている)の絵画があった部屋にまでメアリーを連れ出した。床や壁にはあの不気味にクレヨンで書かれた文字が残っている。

「ねぇ、メアリーこれ読める?」
「どれ?」
「何かギャリーが恥ずかしくなるようなお話みたいなんだけど……。」

と、本を差し出した。

『???
 私はその ?めかしく
 美しい??に 指を?らせ……
 ??を?えさせる彼女を そのまま……』

「何て書いてあるのかな?読んでよ、ギャリー……。」
「…………ヤダ。」
「えーなんで?気になるー!」
「……アンタたちには早いのよ。」

ギャリーは困った様子でメアリーを見つめた。やっぱりどんな内容のお話だったのかメアリーにもわからなかった。
ただ、ギャリーが2度もこの本を見たためなのか、非常に困り果てている。おそらく「何でこの子たちはこの本を読みたがるのよ。」とでも思っているのであろう。しかし、その思いは間違っても口には出さず、心の奥にしまうことにした。
気を取り直して、赤い絵の具の足跡をたどり扉を開けて前に進むことにした。しかし、ギャリーが何かを見つけた。

「イヴ、あっちの通路に花瓶があるわ。念のために寄って行きましょ?」
「そうだね。」

その会話にメアリーは首を傾げ、不思議に思いながら後に続いた。
そうして、台に置かれた花瓶に自分たちのバラを活けた。
もちろんダメージはないので元気そのものなのだが、もともと元気だったのが、もっと元気になったような気分になった。依然とメアリーは2人の行為に不思議に思っている。

「そういえば……アタシとイヴにも薔薇があったってことは……もしかして、メアリーの薔薇もあるんじゃないかしら?」

そう疑問にもつと、メアリーは何かを理解したのか、「うん、持ってるよ!黄色いバラ!」と言って、ポケットから黄色いバラを取り出した。そのバラは、イヴたちと同じように造花のように美しかった。本物かどうかはよくわからないが。

「あら、ホントね。2人とも、しっかり持ってるのよ。なくしたらダメよ。誰かに渡すのも危ないからね。それから………。」
「わーイヴのバラは赤なんだね。わたしのバラは黄色だよー。」

メアリーはギャリーの注意に聞く耳を持たず、メアリーが持っている赤いバラを見てはしゃいでいた。

「黄色好きなんだけど、ピンクも好きなんだ。あと青も!」
「……人の話は聞きなさいよ。」

メアリーのはしゃぎっぷりに、ギャリーはあきれて忠告するのをやめた。
そうして、その先の細い通路を抜けると『一体 どちらが 正しいのか』と書かれた張り紙が書いてある踊り場に出た。この貼り紙は何を指しているのか。全く分からない。何も起きないのなら、この先を進もう。
短い階段を昇っていくと、『嫉妬深き花』という絵画と扉を発見した。もちろんの事、扉には鍵がかかっている。仕方なくその『嫉妬深き花』がある通路を進み、その先の扉を開けた。
扉の先には、とても可愛らしいウサギの置物が並んだ部屋になっていた。部屋の奥には、『赤色の目』というタイトルの、これまた可愛らしいウサギの絵画が飾ってあった。
しかし、こんなに可愛らしい部屋だというのに、ギャリーの様子が変だった。何か嫌なものを見るような目で、あたりを見回している。

「……ったく、この絵といい、部屋といい、何でこんな気色悪いのよ!」

ギャリーは、この可愛らしいウサギたちを見て本当に嫌がっていた。ウサギが嫌いなのだろうか?

「え?そうかな……カワイイと思うけど。」
「えー!?これのどこがカワイイのよ!」
「そうかなぁ……イヴはどう思う?」
「ん~……撫でたいなぁ……って思う。」

ウサギの絵画を見て純粋にイヴはそう思った。

「……イヴ……好きなの?こういうの……。アタシは無理だわ………。」
「ギャリーって……ヘン!」
「変なのは、アンタたちでしょ!………まぁ、それはともかく!こんなとこ、さっさと調べて、とっとと出ましょ。この部屋、何だか見られてるみたいで、すごく落ち着かないわ。」

ギャリーが怯える中、イヴはまず近くの本棚を調べた。その本棚に『心壊』と書かれた本があった。
中身が読めないので、ギャリーに読んでもらうことにした。

『あまりに 精神が披露すると
 そのうち 幻覚が見え始め……
 最後は 壊れてしまうだろう
 そして 厄介なことに………
 自身が “壊れて”いるのを
 自覚することは できない』

「どういうこと?」
「まぁ、今のアタシたちみたいなものね。結構精神的にキッツイ事ばかり起こってるから、そろそろ壊れちゃうんじゃないかしら……。」
「ギャリー、私たち壊れちゃうの?」
「壊れないわよ。たぶん、これは忠告なのかもしれないわね。いい?疲れたらちゃんというのよ?わかった?」
「うん。」
「メアリーもね。」
「はーい!」

まるで親のように、ギャリーはイヴとメアリーに念を押すように言った。
改めてこの部屋を探ると、緑のウサギの置物が突然動き出して地面に落ちて割れてしまった。よく見ると、破片の中で何かが光っていた。それを取り出すと、紫のカギだった。これで、鍵のかかった扉を開けることができるはず。
イヴはポケットに鍵を入れて、ギャリーとメアリーとでこの部屋を出てその扉へと向かった。
しかし、壁にかかった絵画から、物音が聞こえた。

「なに……?この音……近づいてくる……。」

そうつぶやいている場合などなかった。絵画の奥から大きな絵が近付いていき、目の前まで迫った時、床から棘のツルが飛び出したのだ。

「!?」
「地面からなにか出てきた!」
「な、何かマズイわ!みんな絵から離れて!」

そういうギャリーに、絵画の目の前にいるイヴを守ろうと、メアリーは「イヴ!あぶない!!」といい、自分のほうへと引き寄せた。ギャリーも反対側へと避ける。
その時、棘のツルが飛び出し、通路を塞いでしまった。

「2人とも、大丈夫?!」
「あーびっくりした!」
「イヴ?ケガとかしてない?」
「うん、大丈夫。」
「よ……良かった……。」

ギャリーはほっとして胸を撫で下ろした。

「それにしても、これ……邪魔でそっちにいけないんだけど。切ったりできないかしら?」

そういって、棘のツルを調べるととんでもないことが分かった。

「何これ、石でできてるわこの植物。どうしましょ……。」

通れないことには一緒に行動はできない。ここで足止めを食らったようだ……。
だが、メアリーにはそんなことは関係なかった。

「………ねぇ、イヴ。さっきの部屋で、カギ拾ったよね?そのカギで………そこのドア、開けられるんじゃない?もしかしたら、違う部屋にこれを壊せる道具があるかもしれないよ。」
「うん、そうだね……でも……。」
「ねぇ、見てきていいよね?」

イヴの言葉もそっちのけ、メアリーはギャリーに問う。

「うーん……でも………2人だけで大丈夫かしら……。」
「大丈夫だよ!ね、イヴ?」

メアリーが向こうの部屋に行こうとしているが、2人で行くのは少し心細かったため、イヴは「分かれないほうがいいと思う。」と答えた。

「えーっ、なんでよ?すぐ戻ってくれば、大丈夫だよ!他に、良い方法思いつかないし……。」

メアリーの言葉はごもっともであった。

「確かに、その通りだわ。……別行動はあんまり気乗りしないけど……。でもいい?何もなかったら、すぐにここに戻ってくるのよ?どうするのかは、その後改めて考えましょ。」
「うん!わかった!」

メアリーは、ギャリーの忠告を聞いたのか聞いてないかの声色で返事をし、イヴに「それじゃ、行こう!」といって、イヴの手を握り扉に向かった。少しだけ、イヴはさびしそうに、ギャリーを見つめていたが、「気を付けるのよ!」というギャリーの言葉で何となく元気が湧き、きっと何か方法はあると思考を巡らせ前に向き直った。
鍵のかかっていた扉に、紫のカギを差し込みまわす。施錠が外れる音が聞こえ、扉の中の部屋に入っていく。
その部屋は、箱が敷き詰められた部屋だった。不気味に無個性が数体おかれている。

「これぶつけたら壊れそうだよね……重くて全然動かせないけど。」

と、赤い無個性に対してメアリーは呟いた。確かに、これさえ持っていくことができれば、ツルを壊すことはできる。だが、おそらく彼女2人でもっていくことは不可能だろう。
良くわからないデッサンがある椅子では、椅子を持っていきたいとも呟いた。しかし、この椅子は床にくっついていて全く取れない。何のためにこの椅子を固定したのかわからないが、人の気配がする事だけは確かだった。
何か役に立ちそうなものはないかと、この部屋を捜索する2人。蓋が開いている箱には、色々な種類の絵の具、黄ばんだ画用紙、色々な画材等があった。ふと、メアリーが何かを見つけたらしく、声を漏らした。そちらの方を見ると、メアリーがパレットナイフを箱から取り出していた。

「これで、あのツル削れないかな!?」

少々目を輝かせていたが、常識的に考えてあの石のツルを削るのは無理。したがってイヴは「さすがに無理だよ。」と答えた。その答えに納得したのか「そうだよね……やっぱりだめかぁ……」とがっかりした。

「でも一応、これ持っていこうかな……念のため、ね………。」

念のため。しかし、何に使うのだろうか?メアリーの何となく意味ありげな言葉が、かなり気になってしまう。この先このパレットナイフを使う機会があれば、それはそれでとても役に立つのだが、意味ありげな言い方では何か別の事に使うのではないかと錯覚してしまう。だが、きっとそんなことはないと必死に思い、最悪の状況になるようなことを考えるのをやめた。
そうして、他にも使えそうなものがないかと探っていても、使い古してある筆があるだけで、特によさそうなものは見つけだすことができなかった。

「うーん……あんまり役に立ちそうなものないね。」
「そうだね、メアリー。」
「いったんギャリーのとこに戻ろっか?」

そう会話した時だった。部屋の灯りが付いたり消えたりしだした。それに驚く2人。そして、一度真っ暗になり、数秒した後に元の明るい部屋に戻った。だが、何かに襲われるというわけではなかったので、2人はギャリーの元に戻ろうとした。
しかし……

「あれ?出口が……。」

無個性で出口が塞がれていた。

「な、なんで移動してるの?さっきは壁際にあったよね?」
「もしかして、さっきの電気が消えたりするときに動いたんじゃ……。」
「そうなの?とにかくどかそう!イヴ!」
「う、うん!」

そういって、襲ってくる気配のない無個性の横に立ち「せーの」という掛け声で、力を出して押し続けた。だが、全くびくともしない。1mmたりとも動くことはなかった。まるで、床に固定されているかのように。

「イヴ、どうしよう……出られなくなっちゃった。仕方ないから、こっち行ってみようよ、イヴ!」
「え、あ、うん……。」

ここで「でも」と投げかけても、通れないのは目に見えている。イヴはメアリーに手を引かれ、この部屋にある扉の向こうへと足を運んだ。
扉を開けると、通路だった。電気の灯りは明るくなったり暗くなったりで、目が悪くなりそうだった。目の前の扉を、誰かが通っていく。階段を上がって窓を確認すると、その人影がやってきて窓を3回たたいた。ここに来る前に、同じことがあったなーと思い返すがやっぱり鳥肌が立ってしまう。
そうして、振り返り階段をさがっていくと、コツ、コツと何かの音が聞こえた。その音を確認するため見に行くと、赤い玉が転がって行くのが見えた。それを目で追っていくと、その玉は壁にぶつかり潰れてしまった。潰れた球は、血のように液体をぶちまけ床と壁を汚した。
玉が転がっていったほうに歩みを進めると、『ピエロ』というタイトルの絵画があった。よくみると、真ん中には何かが取れた跡が残っていた。あの玉はおそらくここから取れたのだろう。
道を進むと、壁に文字が現れる。

“イヴ きみに
 たのしんで ほしいから”

“おとなのいない
 たのしいせかいへ”

“いっしょに いこうよ”

“おともだちも いっしょだよ”

この美術館に迷い込む前から疑問に思っていた。何故自分の名前をこの美術館が知っているのだろうか。受付で親が名前を書いたから?いや、そういうようには見えなかったが、そもそも、何で自分が対象にならなければいけないのだろうか?この美術館は、歓迎どころかいろんなものが自分たちの前に立ちふさがり襲ってくるばかり。この場所が、どうして楽しいと言えてしまうのだろうか……。
そう思いながらも、その先の扉を開けた。

「ギャリーはどうしてるかな。置いてきちゃったけど……。」
「うーん……。」

ぽつりと言ったメアリーだったが、イヴはギャリーの事が心配でたまらなくなっていた。
しかし、戻ったところで道は塞がっているし、ギャリーの元には戻れない。このまま道になりにそって行けば、いつかギャリーに会えるかもしれない。
そう思っていたが、目の前は大きな穴が開いていて進むことができなかった。アリの絵画を置くように、何かで道を作れば通ることは可能なのだが、今のところはそれらしいものは見つからない。完全な行き止まりだ。
あぁ……今ごろギャリーはどうしているだろうか……何かが起こって悲鳴を上げていなければいいのだが……。


続く
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