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【Time Trip】第2話【オリジ小説】

Time Trip ―第2話―


時は西暦6000年の未来世界。宇宙船から見た、美しい青色を輝かせている地球に住む全ての地域は、人間や動物に害を及ぼさないほどの美しい空気に包まれ、とてもとても平和に過ごしていた。空気がとてもきれいであるため、空の色は毎日鮮やかな青空だ。しかし、地球も生きているため、毎日が晴れというわけではない。気候により、一部の地域では雨が降ったり雪が降ったり、竜巻が起こったりと天候は様々だ。定期的にやってくる地震は、この地球を支えるためのシステムのおかげで、地震が起きたとしても被害者を一切出さないようになっている。地震で津波が起きても、システムはすぐに判断をし、高くそびえる堤防を造る。それだけでも飽き足らず、すべての家々に、頑丈なシェルターができる。たとえ堤防を越えたとしても、流される心配はないのだ。外にいるものも、近くに簡易シェルターを造ることが可能なので、逃げ切れなかった場合は、それを使用して身を防ぐことができる。空中で飛んでいる車も、災害用システムが自動的に作動するため、安心して車の運転ができる。
そのほかのシステムといえば、防犯システム。犯罪者だと検知された者は、すぐにポリスに捕まる。防犯システムが、警察署にデータを早急に送るため、ポリスはその現場に向かう事ができる。移動手段は、ワープするための小さなスティックだ。犯罪者がいるデータを取り込んだ後、そのスティックにあるボタンを押すと、ホログラム画面が現れ犯罪者がいる場所を示す。その場所をタッチするとワープすることができるのだ。ちなみに、そういう事をしなくても、近くのポリスアンドロイドがやってきて犯罪者を取り押さえる。そして、その情報を警察に送信し、署へと連行していくのだ。基本的に、ワープは移動手段だと考えればいい。
そのほか、家々には自動的に食事を作ってくれる機能がついている。しかし、皆が皆それを使っているのではない。料理好きのものは、それを使わずとも料理をうまく作る。お風呂は全自動でお湯を沸かし、洗浄する。正直言って、全自動の家々が多い。
しかし、機械ばかりに頼っているのではない。人々が歩く歩道を、動く床にしようという計画があったのだが、それでは人々の足腰が退化してしまう可能性が高いため、却下されたのだ。そのため、歩道は昔からずっと、普通の動かない歩道となっている。ちなみに、バリアフリーの歩道に関しては例外である。
空を飛ぶ車も全自動だ。システムに異常が出ない限り、事故は一切起こらない。空を飛ばない車は、ほぼ人の手で運転するもので、事故が起こりやすいのだが、信号が赤の場合、目の前に電子ウォールが現れ、赤で渡ろうとしてしまう車を遮ることが可能なため、こちらの事故もほとんどない。
そんな素晴らしく平和で、いつだって過ごし易くなるように、日々研究を重ねている科学者が2人。1人はディル。この世界で、科学者となるために生まれてきた、クローンの女性。身長がとても小さく、とても科学者には見えないのだが、開発するものは誰よりも遅れを見せない一級品。しかし、ほんの少しおっちょこちょいなのがたまにキズ。それを補うのが、もう1人の科学者。彼の名はスタンリー。ディルと同等の能力を持った、同じく科学者となるために生まれてきたクローンの男性。彼はディルよりも長身な体を持っていて、ディルと一緒に歩くとかなり目立ってしまう。そんな凸凹コンビが、毎日平和のために、研究にいそしんでいるのだ。もちろん彼ら2人だけでは務まらないので、大勢の助手や、アンドロイドたちも一緒になって研究をしている。
ちなみに、彼らが誰のクローンかというと、彼らを生み出した最高技術を持った科学者だ。彼は、自分の技術を持った人間を増やしたくて、自ら細胞を取り出して作り出したのだ。しかし、途中で自分よりもっとすごい能力がほしいと欲求を深め、いろいろなプログラムを組み込んだ結果、データは2つにわかれてしまい、違った姿のクローンができてしまったのだ。普通ならばクローンであるなら、自分と似た姿の人物が出来上がるはずなのだが、どういうわけか2つにわれて出来たクローンは、自分とは全く違う姿で、自分とは似ても似つかない顔をしていた。だが、ここで研究をやめるわけにはいかなかった彼は、2人を自分のクローンとして完成させることを決意した。そうして出来たのが、ディルとスタンリーなのだ。
ディルはとても小さく、生まれて出てきたときは3歳児の子供のようだった。歩くのもちょっと目を離しただけで、必ずどこかで転んでいるぐらい。しかし、話す言葉は大人顔負けのしっかりしたしゃべり方だった。スタンリーはディルの2倍の身長で、10歳ぐらいの子供に見えた。転びそうになるディルを支えてあげている姿は、まさにお兄さんのよう。だが、ディルと違って話すことは苦手で、片言のようにしか話せなかった。そんな、うまく話せないスタンリーの代わりに話すのがディルだった。小さな姿でも、そうして支えている姿はお姉さんのようだった。つまり、ディルとスタンリーはお互いを支えあって、今までを生きてきたのである。
そうして数年がたったころ、自分たちを生み出してくれた科学者は、病気を患って息を引き取り、2人はこの科学者の跡を継ぎ、平和のために研究を続けているのである。
そんなある日の事だ。ディルがいつものように研究を進めていると、スタンリーが突然話しかけてきた。

「ディル、この世界は平和なのだろうか?」
「えっ?……何言ってるんですか、平和ですよ。私たちを作ったあの人や、先代の科学者のみなさんのおかげで、どれだけの人が平和に暮らせていると思っているんです?」
「それはわかっている。だが、どうも納得がいかない気がしてな……。」

スタンリーはこんな設備の整った世界が、まだ平和ではないと思っているようで、言葉通り納得がいっていなかった。この世界は確かに平和だ。平和すぎて、他に何をすればいいかわからなくなるほどだった。

「じゃ、聞きますけど、どこが納得いかないんです?」
「それが分かっていれば、今ごろ研究はさらにはかどり、今よりもっと平和な世界になっているはずだ。」
「それじゃ、改良の仕様がないじゃないですか。」
「しかしだな……。」
「では、市民の意見を読み上げれば、納得がいかないところが分かるのではないでしょうか?」

ディルが提案をすると、スタンリーは「そういえばそうだった」と声を上げ、この研究所の一番大きなモニターに、市民の意見が書かれているデータを開いた。そこには、とてつもなく大量な意見が書かれ、すべてを読み上げるには一日では終わりそうもないぐらいだった。その内容は、過ごし易いとの意見が一番多かった。防犯に関しても、災害に関してもいう事はない。とても安心して過ごせるなどなど。しかし、その中にはほんの少しだけ不満な意見が入っていたりする。それを糧に研究がいつも進められているのだ。
そして、スタンリーはある程度読んだところでとある意見を発見した。そして一言「これだ」とつぶやく。

「何か閃くものが見つかったのですか?」
「見つかったよ、ディル……!」

その言葉の後に、スタンリーは「これで世界は変わる……」と続けたが、自分に聞き取れるほどの言葉でつぶやいたため、ディルには上手く聞き取れなかった。そのため、もう一度言って欲しいと催促をすると「いや、ただの独り言だ」と言ってからこう続けた。

「とにかく、説明するにはまだ早いが、ディルにも手伝って欲しいんだ。この世界がもっと平和になるためには、キミの力が必要だからね……!」

何を作ろうとしているのかディルにはわからなかったが、スタンリーが何かを企んでいることはわかった。でも、その企みは世界平和だと言っているのだから、特に危険性はないと感じ取った。そもそも、スタンリーがこれまでおかしな行動などとったためしがない。いつも平和のために、一緒に研究してきたのだから、彼はきっと素晴らしいものを思いついたに違いない。彼に協力し、この世界をもっと過ごしやすく、平和な世界に出来るのなら本望だ。そうディルは思い、スタンリーの研究に協力することを、快く引き受けた。
だが、スタンリーを信じているが故に、この閃きがとてつもない悲劇に見舞われるなど、今のディルには想像すら出来なかった。



次の日、スタンリーは自室にこもり、パソコンが置かれたテーブルの前に座り、何かのデータを打ち込む作業をしていた。しかし、長々と書いていたデータを途中で書き込むのをやめ、一度目を通すと一気にそのデータを削除した。自分が思いついたものとは違っていたからなのだろうか、その作業を何ども繰り返していた。
ディルは、その様子を眺めつついつも通りの作業を続けた。たまに、スタンリーに呼ばれ部屋に入り、研究の手伝いもした。といっても、思ったことを口にしているだけで、スタンリーの研究そのものを見ていないため、正直、自分がしている事は本当に彼の役に立っているのだろうかと思うぐらいだった。むしろ、何を作っているのかさえ教えてくれないスタンリーが、だんだん怪しく思えてきたというのが妥当かもしれない。

「ディル、時間にルーズな人をどう思う?」

数日後、ふとスタンリーが訪ねてきた。
最近は呼ばれることが少なくなってきていたので、少し怪しく思いながらも、ディルはいつものように思ったことを伝える。

「そうですねぇ……私は別に気にはしませんが、社会的には非常識ですね。でも、途中で事故に巻き込まれたとか、電車が遅れたとか、理由のわかるものでしたら仕方ないと捉えるのが普通ですね。遅れた理由が、寝坊だったらとんでもないんですけど。」

その言葉を聞くと、スタンリーは「そうか」とだけ言って、データを打ち込み始めた。その時に、少々笑みがこぼれていたような気がしていたが、自分の研究がうまくいくと、そのような事が何度かあったため、ディルはそこまで気にすることはなかった。むしろ、研究がうまくいっていることに安心した。特に怪しいものを作っているのではないと、確信した瞬間だった。



そんなある日の事だった。
ディルが休憩室で、ホットミルクをすすっていると、スタンリーが慌ててやってきた。

「ディル!ディル!!ディル!!!」
「な、なんですか……スタンリーさん。」
「ついに完成したんだ!」

目をキラキラさせて、まるで子供のようにはしゃぐスタンリー。そのはしゃぎように、ディルはつられて慌ててしまい、手に持ったホットミルクをこぼしてしまった。幸い、自分にかかる事はなかったが、スタンリーはディルに謝りながら、近くの掃除ロボットを起動させて床を綺麗にした。そして、代わりのホットミルクを別のロボットに用意させて目の前のテーブルに置く。
2人は一息ついて、慌てていた気持ちを落ち着かせた。そして、少し間をとってスタンリーは改めて話しだした。

「ディル、ようやく私の求めていたものが完成したよ。」
「どんなものなのですか?」
「聞いて驚くなよディル。私は世界を変えたんだ!」
「……え?」

つまりそれは、過去の世界へ行き、歴史を変えてきてしまったという事なのだろうか?
そう思ったディルは、真剣な顔になり、スタンリーの目を見てその思った事を告げる。

「スタンリーさん……それは、やってはならない事ですよ?」
「何がだい?」
「何がって……あなた、過去の時代へ行って歴史を変えてきたのでしょ!?」
「そうだが、それがどうしたんだ?」
「今すぐその時代へ行って元に戻してきてください。今ならまだ間に合います!」
「残念だが、それは無理だディル。」

そう言うと、突然地鳴りが起こり始めた。すると、部屋に設置されたモニターにニュース速報が流れる。突然現れた複数の黒い闇。それに飲み込まれると、何もかも消えてしまう光景が映し出された。ビルや家々、逃げ惑う人々、あらゆる物を謎の黒い闇は飲み込んでいく。気が付けば、そのニュース速報も画面にノイズが走り、真っ黒な画面になり何も映らなくなり、そして、何も聞こえなくなった。

「これは……何なんですか、スタンリーさん?」

ディルは、声を震わせながらゆっくりと椅子から立ち上がった。地鳴りのせいでまともに立てず、テーブルに置かれた、先ほど入れ直したホットミルクが再び床に落ちてこぼれる。

「世界が変わり始めたのだよ、ディル……この世界は消え、新しい世界に変わるのだ……そう、私が求めた世界に!」

研究所もこの地鳴りによって、慌てふためく声が聞こえ、遠くから悲鳴も聞こえる。もしかするとこの研究所も、あの黒い闇に飲み込まれているのかもしれない。
そう思い休憩室から出ると、その思惑は当たった。多くの研究者たちやアンドロイドたちが、奥にある地下の部屋がある方に向かって逃げていた。

「ディルさん!スタンリーさん!ここは危険です!早く地下へ!」

研究者の1人がそう言って、その場を後にし自らも地下へと向かった。

「スタンリーさん……これが……これがあなたの目指した世界平和なのですか!?」

ディルはスタンリーを見て怒りをあらわにした。

「ディル、そんなに怒らないでくれ。この世界よりも、もっと素晴らしい平和な世界になるのだ。喜ばしいことじゃないか!」
「どこがですか!!人々が消えていく姿を見て、どこが平和だというのです!!お願いですスタンリーさん、この現象を止めてください!!」
「だから無理だと言っているのだ」
「どうしてですか!?」
「それを語る必要はもうない。何故ならキミは……消えてしまうのだから……!」

言いながら、スタンリーは地下とは反対方向を指さす。その先には、あの黒い闇が迫ってきていた。ゆっくりと進む黒い闇は、何もかも飲み込んでいく。チリ一つ残さず。

「なら、あなたもここで私と同じように消えるはずです!」
「私は消えないさ。世界を変えた張本人だからね。」
「なんですって……。」

スタンリーはディルから数歩離れ、メモリースティックのようなもので何かを描いた。それは虹色に輝いて、中心に2つ取っ手のようなものが見えた。それは、まさに両開きの扉のようだった。

「キミとさよならするのは悲しいことだ。しかしこれも世界平和のためだ。もう会うことはないだろう。さらばだ、ディル。」

光り輝く扉の取っ手を掴み、ゆっくりと開ける。隙間から、白く輝く薄いカーテンのような光が漏れるところで、スタンリーは手を止めて最後にこういった。

「そうだディル。私の子孫が、世界が変わったあとの5000年の世界にいる。気が向いたら行ってみてくれ。」

「ま、キミが消えてしまうのだから、行ったところで探し出すことなど出来はしないと思うがね」と、意味深な言葉を残し、スタンリーは扉の向こう側へと消えていった。そして、スタンリーが通った扉も、細かな粒子になって消えてしまった。
ディルは、スタンリーが最後に何を言いたかったのかよくわからなかった。簡単に考えるとするならば、その子孫と思わしき人物に会い、その人物と共に自分を止めて欲しかったからあんなことを言ったのだろうか。それとも、ただの気まぐれか……。
一緒に暮らしていたのだから、どう考えても前者をとることしかないのだが、今はそのことを考えている暇はなかった。黒い闇が、じわじわと目の前に迫ってきている。
何とかしてこの状況を戻そうと、ディルはスタンリーの自室へと走った。こんな状況になったきっかけは、彼の部屋から起こっていることは間違いないし、止める方法もきっと彼の部屋に少しでも残っているのかもしれない。
黒い闇に飲み込まれていない通路を使い、ディルは右往左往しながらようやくスタンリーの自室前へとたどり着いた。しかし、その扉を開く前から絶望的な結果だということに、ディルはもう気が付いていた。着いた頃にはもう遅い。そこはもう闇の中だった。目の前に見えるのは、何色にも染まらない真っ黒な闇だった。この状況を、何としてでも止めたかったディルだったが、その根源が絶たれた今、他の方法など思い浮かべることができず、頭の中は真っ白に……いや、この闇のように、真っ黒に塗りつぶされていた。
今自分にできることは、この闇から逃れること。黒く塗りつぶされた思考の中で、必死に探し当てた方法がこれだけなんて……科学者とは、なんて非力な存在なのだろうか。
ディルは走り出した。どこに向かうわけでもない。とにかく、この闇から逃れなくてはならない。今ある思考はそれだけだ。
走っている途中で、ディルは何もないところで躓き転んだ。研究所の地面が、固い土やコンクリートじゃなくてよかった。自らの靴下が、太ももまであってよかった。おかげで軽い打撲程度だ……なんて、そんな呑気している場合じゃない。その後ディルは、走り続けては転び、走り続けては転びの繰り返しをしているせいで、着ている服が薄汚れ、かすり傷が多くなった。そうして、ディルは何度目かの転倒をした。もう体も心もボロボロだ。
痛みに耐えながら体を起こすと、前も後ろも、右も左も、黒い闇がディルに迫っていた。

「そ、そんな……!」

逃れる事など、不可能だったのだ。だって、スタンリーが言っていたじゃないか。

『キミは……消えてしまうのだから……!』

そう言っていたじゃないか。
ふと、自らの体を見ると、だんだん薄れてきていることが視界に入った。おそらく、ディルに迫る黒い闇が吸い込んでいるのだろう。
もう諦めよう。そう思ったディルは、ため息をついて床に座り込んでしまった。
自分は消えてしまうが、消えたあとには、自分の知らない素晴らしい世界平和がそこにあるのだ。何を絶望することがあるだろうか。新しい世界では、人々が平和に暮らす。自分や、この世界が消えたことなど、きっと誰も覚えいない……いや、誰も知る者はいないだろう。
いや、1人いた。この時代から離脱した、スタンリーだ。彼さえ、この世界があったことを伝えてくれれば、きっと……しかし、あの態度だ。伝えることはおそらくしないだろう……。

『私の子孫が、世界が変わったあとの5000年の世界にいる。気が向いたら行ってみてくれ。』

今の現状を受け止め、確実に諦めようと覚悟を決めたディルの脳裏に、先ほどのスタンリーが発した意味深な言葉が響く。
そうだ、選択肢はまだここにあった。

「無理かもしれない……でも、一か八か……!」

ディルはポケットから、スタンリーが持っていたものと同じ、メモリースティックのようなものを取り出して、自分が入れるほどの四角形を描く。空中に現れた虹色の四角形に、『時空転送』の文字が浮かぶ。そこに、先ほどスタンリーが言った年数を入力し、『転送』と書かれた場所をタッチすると、虹色の四角形は激しく輝いた。自分を飲み込もうとする黒い闇は、もう眼と鼻の先。スタンリーが言っていたことが本当ならば、この5000年に行かなければならない。だが……

「うぅん……もう迷ってる暇なんてない。行かなきゃ……!」

自分の体が全て消えてしまう前に、ディルは目をつぶってその四角形の中に飛び込んだ。目を開けると、黒い闇はちょうどディルが立っていた場所を飲み込んだところだった。再び自分の体を見ると、さっきよりも自分の体が薄くなっていた。

(お願い、私の体、まだ消えないで……!)

そう願い、自分の体が落ちゆく中、走り続けた疲れが今やってきたのか、ディルはそのまま気を失った。



「そして、私はあなたに助けられた……というわけです。」

言いながら、先ほど誠司が口移しで水を与えてくれたことを思い出し、少々頬を赤らめる。その様子を見て、誠司の頬も赤くなる。

「……と、とにかく、結果オーライじゃねーか!消えることもなくなったんだし、その、スタンリーだっけ?そいつの子孫を探せられるな!」
「あ、いえ、それはもう達成しました。」
「え?」

ディルは、ポケットからメモリースティックを取り出し、付いているボタンを押すと空中に小さなホログラム画面が浮かび上がった。画面をタッチして、写真フォルダを選択し、とある写真を開いた。そこには、軽く笑うひとりの青年が写っていた。その青年は、誠司とほぼ瓜二つのような顔立ちで、髪の色もほとんど一緒だった。ただ、髪の長さは違ったが。

「こ、コイツが、スタンリー?」
「はい!誠司さんを見た時とても似ているので、おそらくスタンリーさんの子孫は、誠司さんかなって。」
「で、でも、似すぎだろ!!!これじゃ、俺の親がスタンリーだって言っても過言じゃないぜ……!」

とは言うものの、自分の親の顔はちゃんと覚えているし、そもそも親からは何も聞かされていない……考えてみれば、自分は親とは似ても似つかなかったと思い返す。近所でも、顔が似てないことから、どこからか連れてきた子ではないのか、血が繋がっていないのではと言われたものだ。

「まぁ、いいや。考えるのめんどくせぇ。ディル、とにかくこいつがいる時代をなんとしても調べ上げて、世界が変わっちまう前に止めてやろうぜ!」
「は、はい!……でも……誠司さんはそれでいいのですか?」

ディルは、消えてしまった6000年の世界を取り戻したいのだが、スタンリーによって作られたこの世界はなかったことにされ、誠司自身も消えてしまうかも知れないのだ。当然、この世界で生きている人もいなくなってしまう可能性だって充分にある。ディルはそのことを心配した。いくら自分のいた世界を取り戻したいといっても、ここの世界の人々だって必死に生きている。簡単に事を進めても良いのだろうか……と。

「何言ってんだ。取り戻したいんだろ、自分のいた世界をさ。それに、俺はこんな世界は飽き飽きしてたところなんだ。」
「でも、私の世界が消えて、この世界は平和になっているのでしょう?」
「確かに平和だ。だが、スタンリーが作ったこのシステムが気に入らねぇ。」

誠司はディルに、この世界のことを簡単に説明し、さらに続けた。

「俺以外の人も、こんな世界望んじゃいないよ。だから、俺はディルに協力する。一緒に、元の世界に戻そうぜ!」

その言葉に、彼は覚悟を決めたのだと、ディルは感じ取った。
そしてその覚悟を受け取り、誠司が協力してくれることに感謝を込めて、

「はい!よろしくお願いします」

太陽のような眩しい笑顔で、ディルはそう言った。



続く。
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