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「7th Spirit」の最終回ができた!追記にエピローグが読めますw

―7th Spirit ~part10 Final episode Last 後編~―



「あ、兄貴・・・?」

間違いはなかった。目の前にいるのは、いつも俺の事を励ましてくれた、あの「兄貴」だった。
でも、そんな兄貴が、どうして死神なんかに・・・?

「大きくなったな、チビ助。」

兄貴はヴァリスを通り越し、俺に近づき頭を優しく撫でてきた。暫く驚愕していたが、我に帰り、俺は兄貴に抱き着き、声を殺して泣いた。
そんな俺に、さらに優しく頭を撫でてくれる。

「会いたかった・・・ずっと・・・ずっと・・・!」
「・・・そうか・・・ごめんな、今まで会えなくて。」

抱き着いたままの俺に、兄貴はずっと頭を撫でてくれた。優しくて、とても温もりのある掌で。
そんな兄貴に、俺は19歳という年齢を忘れ、小さな子供に戻ったかのように、大声で泣いた。今まで会えなかった悲しみと、今ここで会えた嬉しさが重なり合い、それが声としてあらわになり、泣き声へと変わったのだと、俺は思う。

「ほらほら、もうすぐ二十歳になるお前が、そんな大声を出して泣いちゃダメだろ?」

そんな言葉も優しくて、俺はさらに泣き叫び、「だって、兄貴に会えて嬉しいんだもん」と言いたかったはずのセリフが、泣き声とともに発せられたせいで、全くの言葉にならずにぐちゃぐちゃになっていた。俺自信も、何を言っているのかわからない。必死に兄貴に伝えようとして、さらに喋ろうとしたがやっぱりさっきと同じだった。
兄貴は笑いながら、俺が言っていることに「うん、うん」と頷きながら、頭を撫でてくれていた。

数分後、涙はまだ多少出るが、気持ちはおさまった。

「やっと泣き止んだか、この泣き虫め。」

優し声で言いながら、兄貴は俺に軽くデコピンをする。痛い。
俺は「仕方ないだろ。」というように、デコピンされたところを摩りながら、顔をちょっと膨らませた。こんな事やってる俺は、やっぱりまだまだ子供である。

「えっと、お取り混み中悪いんだけど・・・。」

感動の再会を果たした俺達に話し掛けたのは、紛れも無くヴァリスだ。空気ぐらい読め。

「何だヴァリス、少しは空気を読めよ・・・。」
「いや、確かに話し掛けるタイミング間違えたけどさ、傷の方は大丈夫なのか?」

傷?一体なんの事だ?
そんな疑問を浮かべ、多少首を傾げてみた。
そんな仕草に気付いたのか、兄貴はこっちを向いてクスッと笑い、こう言った。

「ヴァリスに聞かなかったのか?」

そういえば、リースに体中を傷つけられたって言ってたな。でも、そうだとしたら、傷なんて今頃治っているはずだよな。
そんな疑問を、兄貴に問い掛けると、笑いながら説明してくれた。事情を知っているヴァリスは何故か怒ってるいるが。

兄貴の話によると、体中についた傷はどれも深いもので、治りが遅かった。しかも、嫌なおまけつきというように、すべての傷は完全には治らないようになっていたのだ。治りかかって、少し動けるようになっても、動いたせいでまた傷が何箇所か開く。そのせいで出血が起こったり、酷いときには吐血もしてしまうほどだった。
それが何度も何度も続き、今でさえも続いているのだと言う。しかし、前よりは納まってきているようだ。

「とにかく、チビ助に会えてよかったよ。」
「チビ助って・・・俺はもうそんな歳じゃないっての。」
「こっちにとっては、お前はまだまだ『チビ助』だよ♪」

そう言って、兄貴は俺の頭を乱暴に撫でた。おかげで髪の毛がグシャグシャだ。トレードマークである、アンテナみたいに出てる髪は、乱暴に撫でられてもすぐにまたピンと立つ。不思議だ。
とにかく、兄貴に会えたのはいいのだが、俺にはまだヴァリスに聞きたいことがあったんだった。

「あのさ、ヴァリス。」
「ん?」
「何でお前、歳とってないんだ?」
「あぁ?」

これが気になった。俺が生まれる前の話でさえ、すでに俺と同じ歳になっているはずだ。なのに、何でまだあんなに若い顔立ちしてるんだ?
リースが歳をとっていないのは理解できる。あいつも、魂のカケラそのものなわけだし、しかもあいつの残りの魂も、俺と同様に、本体にあるときた。これで理解できなかったら、俺はどれだけ馬鹿なんだよ、という話である。

ヴァリスが歳をとっていないのは、リースに、能力をほとんど奪われてしまったからだとか。そのせいで、歳をとらない体になってしまったのだという。
しかし、部隊のメンバーも昔からかわってはいないというのにも疑問が走る。メンバーも歳をとっているはずなのに、なんだ、あの若々しいメンツは。彼らもヴァリスみたいな事にあったのか?いや、だとしたら過去話で出て来ても不思議ではない。じゃ、一体・・・?

まぁいい、考えても仕方ない。これは仕様ということにしておこうか。

それと、疑問がもう一つ・・・

「何で兄貴は死神になったんだ?」
「何でって・・・何でだっけ?」

わざととぼける兄貴は、ヴァリスの方を向いて何故自分が死神なのかをたずねた。

「それぐらい自分で言えよ。」

呆れた態度を取ったヴァリスだったが、結局は素直に教えてくれた。

「お前、死神にならなきゃ消滅するかもしれなかったからだろ!?」

あの時、全身に傷を負ってしまった兄貴は瀕死の状態だった。あれだけの傷を受けたにも関わらず、魂の状態を維持できて、もはやこれは奇跡としか言えなかった。だが、傷はいっこうに治らず、兄貴の戻るべきだったはずの体へ、戻ることが出来なくなってしまったのだ。それすなわち、死んでしまっているということだ。
そして、一向に治らない傷を負ったまま、兄貴は天国にも地獄にも転送できず、結局死神になるしかなくなってしまったのだ。もちろんヴァリスが言ったように、死神にならなければあのまま消滅してしまうかもしれなかったし、悪く考えると悪霊にも成り兼ねなかったからという理由もそうだ。

「ま、とりあえずそんな感じで死神になったってわけさ♪」
「でも、何で服装がいつものままなんだ?」
「馬鹿だな。死神の格好でお前に会うわけには行かないだろ。」

それもそうだ。兄貴は今まで俺に会う時は、いつも私服だったわけだし。
でも、そんな傷を受けていたにも関わらず、俺に会いに来てくれてたなんて・・・何か嬉しいなぁ・・・。

「そういえばヴァリス、体力大丈夫か?」

ふと、ヴァリスが時間を止めてくれといたことを思い出し、そう尋ねてみた。すると、ヴァリスのほうも思い出したように、「あ。」と呟く。「あ。」じゃないだろ。
そうこうしている間に、ヴァリスは地面に座り込んでしまった。それと同時に、時間が動きだし、当然の如く、「3:25」と表された俺の腕時計も動き出した。
ヴァリスは兄貴の肩を借りて、何とか立ち上がっていた。立てなくなるほど力を使っていたのかと思うぐらいだ。

「さて、タイムリミットまで後35分だ。残り少ない時間、どうするんだ?」

兄貴にそういわれ、俺は即座に思考を巡らす。時間がないからな。
しかし、こういうときに限ってなかなか思い付かないのである。
リースとの決着はまだ着いてはいないのだが、戦うとしても今の状態で戦えるはずもない。このまま時間が経つのを待っていても、全くの意味がない。ならば、一体どうすればいいのだろうか?
そんな風に思考を巡らしていると、腕を負傷していたことを忘れて、腕を組んでしまった。もちろん、その時に痛みが走り「いってぇえ!!」と叫んでしまったが。
そのようすを見ていた一同は、やれやれというような仕種をとっていた。

「思い付かないんだったら、適当に時間潰せば?」

リースが呆れた態度をとりながら話す。

「適当って、何だそれ・・・。」
「適当は適当だよ。」

すると、「じゃ、片っ端から謎解明ってのはどうだ?」と、兄貴がそう言った。謎解明?
そういえば、ここにいるメンバーの謎っていうか秘密とか、まだ解らないままだったなぁ。
現在時刻は3時30分。タイムリミットまで後30分ある。話しながら解明するなら、妥当な時間だな。

「よし!じゃ、さっさと始めようぜ!」

そう言って、誰から話してもらおうかと思い、メンバーを見つめる。
リースの事は既に謎解明してるわけだし、他のメンバーの謎を俺は知りたいな。特にヴァリスとか・・・。

「え!?俺!?」

今一番知りたいといったら、ヴァリスしかいないと思い、そちらのほうをみたら結構嫌そうな反応が返ってきた。何故だ。

「待てよ!いくら時間稼ぎだからって、それはないだろ!?」

明らかに嫌がってる言い方だ。何故だ。
だが待て、ヴァリスは確かリースに力を奪われたから、今でも若いままでいられると言っていた。じゃ、リースの持ってる死神の力を浄化させ、ヴァリスに戻せば・・・ははっ、まさかな。
そんな思考を巡らしていると、皆が不思議そうな表情でこっちをじっとみつめてきた。こっちみんな。

ヴァリスがダメなら、ミジョルやマリアさん、あとフランシスが気になるところ。だがしかし、マリアさんは必要以上に言うのを拒む。まぁ、話したくないのならばそれはそれで構わないんだが。
ミジョルは「女性に年齢を聞いてるみたいじゃない!!」と声を張り上げて断ってきた。予想はしていたがな。
ならフランシスはどうだろうか?この場にはいないが、誰か話してはくれないだろうか?
そう疑問を問い掛けると、意外にもミジョルが自分と同期だと答えた。しかし、これ以上は何も言わなかった。
リリィはヴァリスの妹ということで、特に謎というものはないが、彼女が天才といわれ始めたのはいつなのだろうか?そもそも、彼女がヴァリス達のグループにいる事自体不思議だ。それを聞くと、意外な答えが返ってきた。それは、ただ単に兄ヴァリスと一緒にいたいということと、

「り、リースちゃんに一目惚れしたのよ。」

だそうだ。そんなんで、よく許しを貰えたものだ。あと、天才と言われる理由も答えてくれた。ただ、生まれた時から勘が鋭いだけだとか。それと、初期の死神の能力が他の者と違っていたからだとか。まぁ、ヴァリスとおなじく、大魔王・・・というか閻魔大王の子供なわけだしな。

さて、まだ時間は残ってるし、少し疑問に思うことを、問い質してみることにする。
何故、死神は魂を転送する仕事についているのだろうか、という質問だ。
これは、ヴァリス・・・ではなく、言いそうなところをマリアさんが遮り、説明をしだした。

天使は基本的、下に降りることは許されてはいない。しかし、選ばれたものならば、降りても構わないということだ。だが、何故そのような事になったかというと、先代の閻魔大王が天使は有意義に過ごし、生まれ変わるのを待っていればいいと、神様に意見したからだそうだ。それからというもの、魂を転送させる仕事は、死神達がやることになったのである。

ふと、腕時計を見る。まだ時間はそんなに経っていない。全くどうしたらいいものか。
そういえば・・・

「なぁリース、お前体に帰る気はないのか?」
「え?」

今や死神だが、死神になる前は魂のカケラだったわけだ。そろそろ、帰ってやってもいいはずなのだが・・・?

「か、帰る訳無いだろ!?僕は死神だぞ!?」
「じゃ、何で体を生かしたままにするんだ?」
「そ、それは・・・。」

そういって、リースは俯いた。そして、それ以上言葉を発しなかった。
これは俺の勝手な推測だが、リースだってもとはといえば人間だったわけだし、寂しいという気持ちが無くなったわけでもない。それに、いくら年数がたって、年齢が28歳だといっても、リースは小学生3年生並の精神。親が恋しくないはずがない。

「いつか帰れるように、体を生かしてあるんだろ?」

リースは黙ったまま。しかし、俯いた状態でごく僅かに頷いていたのを、俺は見逃さなかった。やっぱり、19年も親の顔を見ていないわけだし、寂しいのが見て取れる。
だから俺は、静かにリースの前に手を差し延べ、笑みをこぼしながらこう言った。

「ならさ、俺と一緒に帰ろう。」

突然の発言に、一同は驚く。まぁ、それもそうだろう。
リースは俺の言葉により顔をあげ、こちらを見つめている。しかし、すぐに目線を違う方に向け俯いた。9歳の時から19年たっても、やっぱり子供である。

「帰れるなら、一緒に・・・帰りたい・・・。」

リースは小さな声でそう言った。俺には、はっきりと聞こえたが、もう一度言わせるように、聞こえなかったという態度をとった。すると、リースは顔をあげ頬を赤らめ、しかし、顔は怒った感じに「だから一緒に帰りたいって言ってるだろ!?」と、怒鳴りながら答えた。

「そうか、じゃ、一緒に帰ろうか。」

そう言いながら、もう一度手を差し延べると、リースは恥ずかしがりながら俺の手を取り握った。傍から見ると、兄弟のように見えるのか、ヴァリスがなにかと羨ましそうな表情で、こちらを見つめている。
しかし、何かを払うように首を降ってから、こう言い出した。

「帰るんだったら、まずは死神の力を返してもらわないとな。」

もともとリースだって人間だ。だから、死神の力を取り除かないと、自分の体には戻れないという。

「ねぇ、死神の力を取り除くってことはさ・・・。」
「クロアと話せなくなるかもな。」
「・・・・・・。」

クロア。それはリースが大事にしているクマのぬいぐるみの事。クロアは、リースが自分を「リース」と名乗った時から、動き話すことが出来るようになった。しかし、死神の能力を取り除けば、クロアと話すことが出来なくなるかもしれないのだ。
それを今知ったリースは、いつの間にか頭に乗っていたクロアを両手で掴み、自分の目線に持ってきた。クロアをじっと見つめているその表情は、今にも泣きそうである。

「こうちゃん、ようやく帰る決心をしたんでしょ?」
「うん、でも、もうクロアと話せなくなるの、僕やだよ。」

言いながら、リースは涙を流した。
するとリースの手から、クロアがするりと抜け出すと、まるで親が叱っているようなそぶりで、こう言い放った。

「何言ってるんだ!!ボクはいつでもこうちゃんのそばにいるんだよ!?帰ったって、隣にはボクがいる!!永遠のお別れじゃないんだよ!?それに、話せなくなっても、ボクとこうちゃんの心は通じているじゃない!!」
「でも・・・。」
「でもじゃない!ボクはね、この先ずっとこうちゃんに生きていてほしいんだ。だから、お願い。」

そう言われ、リースは涙を流しながら、コクりと頷いた。
そして、自分を説教してくれたクロアを抱き、ヴァリスに向き直った。

「決心がついたのか?」
「うん。」
「じゃ、始めるぞ。」
「ちょっと待て。」

やり始めるヴァリスに、突然兄貴が割って入る。

「何だよ。」
「お前、体力切れしてたんじゃないのか?」

そういえば。
ヴァリスはそんな表情をした。馬鹿だ。

「じゃ、僕は帰れないの!?」
「うっ・・・!」
「酷いよ!せっかく決心が付いたのに!!」

リース、泣きながら怒鳴ってます。やっぱり子供だ。
そして、最終的には声を上げて泣いてしまった。

「だったら、彼にやらせたらどうかしら?」

突然、マリアさんが俺を見ながらそう言い出した。それは一体どういう意味だ。
というか、俺に浄化能力なんてな・・・そういえば、マリアさんがくれたあの魂のカケラは、どんな能力を持っているのかまだ見当もしてなかった。だが、どうやって調べればいいのだろうか。まずそこが問題だろ。
やり方はさっぱりだが、とりあえずその魂に出て来てもらうことにした。しかし、出て来てもらったはいいが、力が抜けた感じになって、一瞬倒れそうになってしまった。それを見逃さなかった高校時代の俺は、クスクスと少し馬鹿にしたように笑っていた。俺って、こんなにも生意気なやつだっただろうか・・・。
とにもかくにも、この高校時代の俺にどんな能力を持っているのか聞かなくてはならない。しかし、生意気な事に全く教えてはくれず、そっぽを向くばかりだ。くそ、こいつも俺だけど、何かムカつく!

「教えてやれよ。時間がないんだからさ。」

そう言ったのは、いつの間にか泣き止んでいるリースだった。かなり意外。

「テメ、くそアンテナ!『かなり意外』って顔するんじゃねぇよ!!」
「顔に出てたのか。これは失礼。しかし、お言葉が悪いようで。」
「う、うるさい!」

何だこの会話。
とにかく、高校時代の俺にもう一度尋ねてみる。

「俺の能力は、相手の力を浄化する能力だ。」

なんとまぁ都合の良すぎることに、浄化能力だったってわけだ。
とりあえず、俺のなかに戻ってもらい、リースを俺の目の前に呼ぶ。

「そんじゃ、始めるけどいいか?」
「うん。お願いするよ。」

そういって、クロアを抱いたままリースは目を閉じた。そんなリースの頭に両手を翳し、精神を調え力を開放する。両手からは、微かに黄色を帯びた輝きが溢れ、リースを包んでいく。その輝きが全体を包んだとき、リースの姿は普通の小学生の姿――「藤沢浩太郎」という名の少年に変わっていった。それと同時に、光の球が3つほど彼から抜け出していった。
1つ目は彼自身の死神の能力で、それはすぐに消滅してしまった。2つ目は、ヴァリスの持っていた力。これは消滅せず、ヴァリスの体に戻っていった。
その時ヴァリスが「おかえり、アリス。」と言ったのを、俺は聞き逃さなかった。「アリス」って誰だ。また疑問が増えたぞ。後で聞けたら聞こう。

そして3つ目は・・・

「・・・ゼノン・・・。」

ヴァリスは、その3つ目の光の球を見て呟いた。「ゼノン」?一体誰だ?また知らない名前が出てきたぞ。
3つ目の光の球は、ヴァリスのまわりを飛び回り、そして人の形をとりはじめた。
その人は、ヴァリスより少し身長が高く、少しばらついた髪をしていた。ちなみに色は、茶色みの強い黒色をしていて、前髪の一部はオレンジ色と山吹色に染まっていた。服装は、以前何かの隊長だったかのようで、黒いコートを肩に掛けるように着ていた。下に着ている服も、隊長だったという面影を残していた。
片目には、傷があるのかどうかは定かではないが、包帯が巻き付けてある。
ゼノンと呼ばれたその人物は、閉じていた目ををゆっくりと開け、辺りを見回し一言呟いた。

「これは一体、どうなっているんだ?」

自分の身に何が起こったのかよく解らない人物に、ヴァリスは無言で近付き静かに抱き着いて顔を埋めた。そして、静かに泣き出した。
そんな突然のヴァリスの行動に、その人物は戸惑っていた。しかし、ふと何かを思い出してから、ヴァリスの頭を優しく撫でる。その光景は、先程の俺と全く同じような光景だった。

「ごめんな・・・約束果たす前に、先に逝っちまって。」
「・・・・・・ッ。」

ヴァリスは涙を流しながら、ゼノンを何度か叩く。そのたびに、ゼノンの着ている服に涙が滲んでいく。何か言葉を言いたそうにしているが、今の状態では話せないと判断したらしく、微かな声が漏れ出していた。
その光景を見ながら「こっちも感動の再会か。」と、いつの間にやら完全に普通の少年の姿に戻ったリースが・・・いや、浩太郎がボソリと呟いた。その表情は、無表情で少し不気味なものではなく、どこか淋しそうな顔をしていた。その証拠にクロアを両手でぎゅっと抱きしめている。
そんな仕種に気付いたのか、ゼノンがこちらのほうに向く。目が合ってしまったのか、浩太郎は慌てて目を反らした。

「リース・・・くんかな?いや、今は浩太郎くんか。」
「・・・・・・。」
「久し振り。」
「・・・・・・。」

何だこの展開の繰り返しは。
兄貴が死神だったり、そんな兄貴とヴァリス達は知り合いだったり。浩太郎の持ってる死神の力取り除いたら、俺の知らない人出てくるし、と思ったらその人はヴァリスとも浩太郎とも知り合いだし・・・。
何?俺、蚊帳の外!?
そう思っていると話は勝手に進んでいく。
ちなみにヴァリスも浩太郎の方を向いている。

「昔と変わらないんだな。まぁ、人間の魂だからそれは妥当か。」

ゼノンが歩いて近付き、中腰になりそして・・・

「元気してたか?」

そう言った。

「ふ、ふざけるな!!一度あんたを殺した僕に、どうしてそこまで接するんだ!?馬鹿じゃないの!?」
「過ぎてしまったことは仕方ない。」

・・・・・・。

「あのさ、主人公差し置いて話し出さないでくれるかな?」
「あ。」

「あ。」じゃないだろ。

「状況が掴めないけど、俺のおかげのようなものだぞ、あんたがここに存在できてんのは。」
「そのようだね、ありがとう。」

ゼノンは、兄貴に似たような笑顔で御礼をいった。
そういった後、彼等がどういう関係なのかを話し出した。
ひとまず過去の話にでてきた、ヴァリスの右腕の位置にいた人物がゼノンだと言い、ヴァリスを一人前の死神にしたのもゼノンだと言った。
こんな少ない説明でも、彼がどれほど大きい存在だったのかが解る。

「さて、今の状況を見る限り、君には時間がないようだね。」

ゼノンに言われて慌てて時計を見ると、時計は3時45分。あと15分だ。

「やっば!早くしないと!リース・・・じゃなかった、浩太郎!」
「な、何?」
「魂のカケラ、最後の一つもらってない!」

集めた数は、自分自身を入れて6つ。あと1つ貰えれば俺は助かるんだ。
しかし、浩太郎はすでに人間の姿に戻っているため、魂のカケラは持っていないそうだ。自分で持っていたはずなのに、人間の姿に戻った瞬間、見当たらなくなってしまったらしい。

・・・となると・・・。

「ヴァリス、もしかして・・・持ってたりする?」

尋ねてみると、ヴァリスは持っていないという仕種をした。しかし、もしかしたらの事があるので、ポケットをあさってみると、掌に納まるぐらいの鍵が取り出された。
鍵といってもただの鍵じゃない。ほのかに輝く金色の鍵。その色は、今まで俺が集めてきた「魂のカケラ」の色と同じだった。しかし、何故最後の魂のカケラは鍵の形をしているのだろうか?

「その鍵は、魂をすべて集めし者に与えられるもの。」

突然、ゼノンが言い出す。話によると、遥か大昔にも俺や兄貴のように、魂を集めて死亡確定されたところから蘇った人間がいたという記録が残っていたそうだ。
さすがに死神達と戦ったとまでは書かれてはいなかったが、その人間はすべての魂のカケラを集め、最後に手に入れた魂のカケラでできた鍵を使い、自分の肉体へと繋がる魂の扉を開け蘇ったのだ。
何と言うか、明らかに後付け設定だよな。

「でも、そうだとしたらその扉はどこに?あと、僕は鍵なんて・・・。」

浩太郎が尋ね、鍵を持っていないと落ち込んだ。それもそのはず。自分の魂のカケラを全て集めた時に、鍵のようなものが出てきたということが無かったのだから、浩太郎の話によれば。
すると、ヴァリスがまたポケットをあさり、今度は白銀の鍵が現れた。おそらく一同は、「あんたのポケットは四次元ポケットか」と思ったに違いない。その証拠に、顔がすでにそう物語っている。
とにかく、どうやらこの鍵が浩太郎の鍵らしい。

「まぁ、何て言うかよ・・・探したらあったんだよ、鍵がさ。」
「それで、今まで黙ってたって事!?」
「そう・・・だな。でも、あの時のお前にこの鍵渡しても、絶対たたき落とされると思って、この鍵ずっと持ってたんだぜ?」

それもそうかと納得する浩太郎。
とにもかくにも、これで帰る準備が出来たということになる。鍵を使い扉を開けたいが、扉が見つからない。というか、現れない。

「扉ないんだけど。」

一言呟いた俺に、面倒臭そうにヴァリスが説明をしだした。といっても、たった一言で終わってしまう。それは、自分の名を名乗ること。そうすれば扉も現れ、勝手に鍵が扉を開いてくれるらしい。
その説明がすむと、浩太郎は何もないところに向き、こう言い放つ。

「我が名は藤沢浩太郎。魂の扉よ、今ここに我の前に現れたまえ!」

何の呪文だと言うような口調で、浩太郎がそう言うと、目の前に白銀の扉が出現した。そして、その扉と同じ色をした鍵が浮き扉を開ける。開いた先は、蒼白に広がる世界。しかし、浩太郎にだけは見えていた。自分が帰るべき場所の光景が。

「こんな感じかな・・・。」

浩太郎は少し淋しそうな雰囲気をだし、全員が見渡せるように振り向いた。

「そろそろ僕は帰るよ。今までこんな僕と一緒にいてくれて、ありがとう。」

少し恥ずかしそうに言ったが、あれが浩太郎の本気の気持ちなのだろう。

「あんたもありがとう。」

「あんた」というのは俺のことだ
その証拠に、こちらに向いている。恥ずかしそうにしてはいるが。

「あんたがいなけりゃ、僕はあの時本当に死んでいた。」
「何言ってんだよ。俺は当然の事をしたんだ。」
「うん、ありがとう。」

それだけ言って、最後に「じゃあね」と淋しそうな声を漏らして扉の中に入っていった。大切な縫いぐるみ、クロアをしっかりと両腕で抱えながら。
そして、浩太郎は扉の先で姿を消し扉が閉まる。するとその扉も、綺麗な光の粒になって消えた。

「次は・・・俺の番・・・か・・・。」

そう呟いて、自分の名を言おうとする。だが、俺は自分の名前が判らない。俺は、何て名前なんだ?
頭の引き出しをすべて掻き出したとしても、「名前」というものが出てこない。一体何故なのだろうか、全く見当がつかない。このままでは、俺は生き返ることが出来なくなってしまう・・・。

「ミャー。」

黒猫の平次郎がすりよってきた。足に顔をこすりつけたあと、もう一度「ミャー」と鳴き俺の顔をしっかりと見つめた。だが、平次郎のその顔はどこか淋しそうに見えた。そして、平次郎は何もないところに向かって、叫ぶようにして鳴いた。まるで、俺の代わりに名前を叫んでいるかのように。

「ご主人の為に言っているのかい?」

ゼノンが平次郎に話し掛ける。どうやら平次郎は、本当に俺の名前を叫んでくれていたようだ。
だがゼノンは、それに対して首を横に振り、無駄だと言うことを平次郎に伝えた。そう、例え他人が俺の名前を知っていても、本人が言わなければ扉は現れないのだ。しかし、平次郎は諦めるそぶりを見せずに鳴き続けた。時間は後半分もない。

「平次郎、もういいよ。俺の為に言ってくれてるのは嬉しいけど、言っても扉は現れないんだ・・・。」
「ミャー!ミャー!ミャー!ミャー!」

諦めたそぶりをしながら、俺は平次郎をなだめようとするが、叫ぶような鳴き声はいっこうに止まらない。もういいのに・・・。
これでもかと必死に鳴いてから、平次郎は人間のように一筋涙を流した。その涙は顔を伝い、地面にポタッと落ちた。

「ミャー・・・ミャー・・・。」
「ありがとう平次郎・・・お前の気持ちはよくわかった。その気持ちだけで、俺は充分だよ。」

泣きつかれた平次郎を抱き上げ、落ちないように抱えてから優しく頭を撫でてやった。
「さて、自分の名前が判らないとなると、もう駄目かもな。」と、苦笑いをしながら呟いた。もう仕方がない。判らないなら、いっそこのままでもいい。
そう諦めかけた矢先だった。奇跡が起こったのかどうか定かではないが、平次郎が鳴いていた方向に、俺が持っていた鍵と同じ色の扉が現れた。そして鍵は勝手に動きだし、扉の鍵を開けた。扉は開き、その先は白銀の世界が続く。いや、俺の戻るべき体に繋がっているはずだ。

「お、おい、マジかよ。他人が、名前を言っても現れないはずだぞ!?」

ヴァリスは驚いた声をあげた。

「でも、これが現実だヴァリス。この猫、平次郎くんの叫びと主人を思う気持ちが、何かしらの力になったんだよ。」

何かしらの力・・・そうなのかもしれない。じゃなきゃ、今ここに現れた扉は一体何なんだという話になる。

「と、とりあえず、これで俺は帰れるんだな?」
「あぁ・・・そうだ。時間がねぇからさっさといっちまいな。」

何だそのふて腐れたような言い方は。何か意味があるように思えるのだが、全く解らないのでスルーする。

「チビ助、帰ったら俺の事忘れちゃうかもしれない。でも、これだけは言っとく。お前はこれからも長く生きろ。その資格が、お前にはある。」

兄貴は、俺の肩に手を置きながら、しっかりと俺の目を見て言った。

「兄貴・・・解った。例え忘れても、俺はこの先ずっと生きてやるよ♪」
「よく言った!さすがは俺の弟分だ!」

「さ、もう残り時間がないから、早く行け。」と、とても素敵な笑顔を見せた。この扉の先にいったら、この笑顔さえも・・・いや、兄貴と会った事も、この数時間俺がやってきた事も、全部忘れてしまうんだな。そう思うと、少し悲しくなってくる。このままでもいいが、俺は戻らなくてはならない。
俺は、兄貴や平次郎、そしてヴァリス達に最後の別れを告げて、扉に向かって一歩一歩足を進めていった。扉をくぐり、白銀の世界が俺を包むとき、俺は自分の「名前」を思い出した。
そう・・・俺の名は・・・

「俺は・・・俺の名前は・・・!」



Continues to the epilogue......
―7th Spirit ~Epilogue~―



ここは、とある有名な病院。どんな状況であっても、患者を受け付ける。病院だから、それは当然なのだが。簡単に言ってしまえば、普通の病院だということはかわりない。しかし、何故「有名」と言われるようになったのだろうか。
沢山の患者が立ち寄る事で有名?それとも、設備が万全だから治すのが早い事で有名?
よく解らないものである。

そんな病院に、一人の青少年が入院している。「何故?」と聞かれれば、「彼は交通事故にあったからだ。」と答えるのが妥当だろう。突然道路に飛び出し、トラックと正面衝突したのだ。

入口から入り、5m~7m先にあるカウンターを左に曲がり、10m~15mぐらい歩くとエレベーターが2つ見えてくる。病院だけあって、中は結構広い。店員20~30人は軽く乗れる感じだ。そのエレベーターにのり、8階のボタンを押す。
8階に着くと、目の前には何やら休憩所のような空間がある。テレビがあり、ソファーがあり、小説や漫画があり・・・憩いの広場か何かだろう。その場所を横目に前に進むと、入口にあったカウンターほどではないが、事務室といったような広さのカウンターが右に見えてくる。そのカウンターを過ぎ、少し歩いた場所に「813」と書かれた個室に着く。そこが彼の病室だ。個室なだけに、結構広い。扉は横に引くタイプになっていて、開けっ放しにならないように、バネがゆっくり跳ね返り勝手に閉まるようになっている。
ベットのまわりはカーテンで隠れている。しかし、4分の3ほどしか隠れていず、奥に行けば姿が見えてしまうのだ。そして、隅には小さな引き出しのようなものがあり、板が出るようになっている。つまり、小さなテーブルになるといいうことだ。もちろんその下の引き出しは普通にものを入れるためのものである。
その引き出しの上には、テレビが置かれている。よくみると、何故かリモコンが見当たらない。別に、見たいときに見たいとか言うと、それに反応して電源がつくわけではない。彼が寝ているベットにしっかりと置かれているのだ。何故なのかは、さっぱりわからない。

彼はベットの上で、リズムの取れた寝息を立てて眠っている。髪の毛は元々縛ってあったのか、少しクセになっている。しかし、トレードマークのように立っている髪は、寝ていても他の髪と混じらず、ピンッと立っている。不思議だ。頭には包帯が巻かれていて、布団から出た片方の腕には、点滴が付けられている。
彼の隣には、彼と同じぐらいの歳の女性が、椅子に座りながら悲しそうに見つめている。おそらく、彼の愛する彼女であろう。服装は結構フリルが目立つスカートに、短めのコートのような服を着ている。袖の先には、コートのフードによくあるファーのようなものがついている。しかし、なかなか起きないようで、それを待っている彼女は、時折眠たそうな表情になる。だが、寝てはならないと、すぐにキッと表情を変える。そして、それを何度か繰り返すのだ。

そういえば、何故この部屋には寝ている彼と、その彼女しかいないのだろうか?と思う人がいるだろう。確かに、普通ならば家族が寄り添うものなのだが、この彼の家族、起きたときのムードを壊すのも気が引けるからと、しばらく違うところで待っていることにしたのだ。
空気を読んでいるのか読んでいないのか、よく判らない家族である。

そうこう説明している間に、とうとう彼女は眠ってしまったようだ。しかも、座った状態でベットに上半身を乗せる感じに。しかし、それは仕方ないだろう。彼が事故にあってから、7時間ほど近く経とうとしているのだから。
ちなみに彼女は、上半身を乗せているので、当然のごとく彼の上にも乗ってるということになる。何と無くだが、彼が少しだけ苦しそうに見えるのは、気のせいだろうか。

そして室内は、音がないぐらいの、静寂の時間が過ぎていく。

ふと、彼女は何かの気配を感じ、目を覚まし体を起こした。眠気をはらい、眠ったままの彼を見つめると、点滴が着いている方の腕がピクリと動いたのだ。それから何度か動いた後、彼はゆっくりと瞼を開けた。
目線だけで、周りの風景を眺めると、視界には自分の彼女の姿がうつる。彼女は嬉し涙を浮かべ、彼をしっかり見つめた後、思い切り抱き着いた。
状況の掴めない彼は、自分に抱き着く彼女を見て、焦ったような態度を取った。そして、何があったのかと記憶を探ると、勢いよく体を起こした。しかし、そのせいで包帯が巻かれている頭が痛み、心配になった彼女が彼の体を支え、再び仰向けの体制になった。

そして、タイミングよく彼の家族も部屋に入ってきた。両親ともども、嬉しそうな表情を浮かべている。彼の姉らしき人物は、嬉しながらも彼の頭を叩いてやった。怪我人の頭を叩くやつがあるかと、再び起き上がったが、また痛みだし結局寝た状態に戻る。
暫くすると看護士やドクターが部屋に入り、座談を含んだ会話をした。後どれぐらいで退院なのか、食事はどんな感じかなどなど・・・。
一段落会話をした後、彼は突然屋上に行きたいと言い出した。しかし、夜も遅いのでまた明日にしてくれないかと、ダメ出しをくらってしまった。

とりあえず彼の家族一同は、いったん自宅に帰るといい、部屋を出ていった。彼の彼女は、どうやら親に許可を得たようで、彼と共に一夜を過ごす気満々であった。
そんな彼女を見た彼は、恥ずかしそうにそっぽを向いたが、まわりに自分と彼女以外誰もいないことを思い出して、体をゆっくりと起こした。そして、彼女に近くに寄るようにいうと、腕をのばして彼女の肩に手を起き、そのまま自分の顔に近づけ、唇にキスをした。ちなみに、これが彼のファーストキスである。

10秒ぐらいそのままの状態で、そっと彼女から離れる。彼女は突然の出来事に驚き、全く言葉が出てこなかった。口に手をあて、頬を赤らめている。
そんな表情をしている彼女に、彼も頬を赤らめながら、一緒にいてくれるお礼だと言った。そして、そのままベットに横になり、彼は眠ってしまった。次いで彼女も、ベットの隣に置いてある折りたたみ式の小型ベットを用意し、そこに掛け布団を置いた。そして、優しい表情を作りながらおやすみと呟き、彼女も眠りについた。


早朝6時15分――
彼は目を覚ます。しかし、体をうまく起こせないため、まだ仰向けのままだ。自力で起きようにも、体全体に痛みが走り、仰向けのままになるのだ。
一緒に寝ていてくれた彼女とはいうと、今の所まだぐっすりと眠っている。早く起きてくれと思っているのは、後にも先にも彼だけである。
しかし、ここは起きたいところ。体に痛みが走るが、起き上がらなければならないのだ。何故かと問われれば、ただ起きたいだけと答えるのが妥当だ。
だが、何故か彼は早く起きあがらなけばならなかった。その理由は、昨夜、夜も遅いのでダメだしをくらったからである。しかし、彼にはまだ他の理由があったみたいだが、それはすぐにわかるだろう。

自力で起きようと、じたばたしている彼の物音に気付いたのか、彼女がゆっくりと起き上がり、眠い目をこすると、必死に起きようとする彼の姿が視界に入り、急いで彼の体を支えて起こした。起き上がった彼は、屋上に連れていってほしいと要求した。

誰かがいるかもしれない。俺はその人に会わなければならない。そんな気がするんだ。

彼はそう言った。
そして、彼女は彼の言われるがままに従い、うまく体を支えながら、彼を車椅子にのせた。そして扉に向かい、彼女が扉を開け廊下に出る。
右に曲がり、カウンターを過ぎ、憩いの広場を過ぎ、エレベーターにたどり着く。上に行くため、ボタンを押すとすぐに扉は開く。早朝なのですぐに来るのは当たり前なのだが。
エレベーターにのり、屋上へ行くためボタンを押す。ちなみに判っているとは思うが、扉を開けたりボタンを押したりしているのは、彼の彼女である。彼が自分でやれるというように手をのばした結果、倒れそうになったりしてしまったため、すべて彼女がやってくれたのである。彼も怪我人なのだから、それらしくしてほしいものである。

屋上の階につき、そこから5mぐらい進んだところの扉を開け外に出る。目の前に見える多くの物干し竿には、何枚ものシーツがかけられている。早朝なのに、何故シーツがあるんだと思われるが、そこは突っ込んではいけない。
天気は、雲が一つも見えない晴天。青々とした空が、どこまでも進んでいる。そんな晴天な空に、小鳥達が囀りながら優雅に飛び回っている。
屋上から見える景色は、早朝にも関わらず、意外と車が多く走っている。この時間帯はきっと、仕事にいく人がほとんどであろう。

そうやっていろいろな景色をみていると、視界に20代後半と見られる男性が、柵に腕をついてこの屋上から見える景色を眺めていた。20代後半といったはいいが、顔立ちやちょっとした仕種が、何かと子供っぽい感じに見えてしまう。
そんな男性を眺めながら少しずつ近付いてみると、ますます子供っぽく見えてしまう。この男性のほうが、明らかにこちらよりも年上だというのに、何がどうやってこの男性を子供っぽく見せているのだろうか。
とりあえず、こうやってみていると、必ずといっていいほど気付かれてもいいはずなのだが・・・

「ん?」

気付かれた。
しかし意外な声だ。まさか声までもが子供っぽいだなんて。

「あ、その、すみません!」
「別に構わないよ。何だか、僕が君達を驚かした感じになっちゃったし。」

やはりどのように聞いても、声変わりがきてるはずなのに、子供のような幼い声をしている。子供のような男性は、彼に優しそうな笑顔を見せた。どう見ても子供の笑顔なのだが。

「そういえば、君達はどうしてここに?」
「あ、その、誰かに会わなくちゃって思って・・・。」

彼がその言葉を言ったとき、男性はクスクスと笑い出した。彼がいった言葉に、何か面白いことでもあったのだろうか?
そんな男性に、彼は「笑わないでください!」と少し頬を赤らめながら、強めにそう言った。

「いやぁ違うんだよ。君と僕の目的が同じだから、驚きを越えてつい笑っちゃったんだよ。」
「ってことは・・・?」
「そう、僕も誰かに会わないと行けないと思ってね・・・。」

そう言いながら、男性は青々とした空を仰いだ。どこか、遠くを見るような表情で。その目線は一体、どこへ向けられているのだろうか・・・よくわからない。
男性は目線を彼に戻し、「そういえば」と言って話題を変える言葉を漏らした。

「君を見たときからずっと思ってたけど、どこかで会ったような気がするんだ。」

今日出会ったばかりの初対面だというのに、男性はそんな事を言い出した。普通だったら絶対に有り得ない。何かのデジャヴだろう。
だがしかし、その言葉を聞いた彼も、

「奇遇ですね。俺も、何だかあなたに会った事あるような、そんな気がしていたんです。」

こんな偶然は有り得ないはずだ。誰かに会わなくてはならないという目的も、出会った事があるという事も、話す内容が100%一致するだなんて、奇跡に近いぐらいの勢いだ。いや、既にこれは奇跡といっても過言ではないだろう。
そして、彼はこう言う。

「もしかすると、会わなきゃならない人って、貴方なのかもしれないですね。」
「かもしれないね。僕も、今そう思ってたところだよ。」

何度も重なる偶然。二人は自然と笑い出していた。それを隣で見ている彼の彼女は、どうやら話に置いていかれているようで、クエスチョンマークをいくつも頭に浮かべていた。

「そうだ。僕達名乗ってなかったよね。」
「あ、そういえば・・・。」
「じゃ、今更だけど名乗るね。僕は藤沢浩太郎。君達は?」

藤沢浩太郎と名乗った男性は、彼らにそう促す。
彼の彼女は、ようやく話をふられたのにも関わらず、気付くのが遅くなり、少しあたふたしながら「柊里美(ひいらぎさとみ)」と名乗った。
そんな彼女を見て、彼と男性はクスクス笑った。そして、男性はもう一度彼に名乗ってもらうように促すと、彼は、こう言った。

「俺ですか?・・・俺の名前は、日比野京介!」


THE END......
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